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-植物鉄栄養研究会-


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トウモロコシのアルドケト還元酵素-4ファミリーに関する機能ゲノミクスと構造的知見:胚におけるストレス代謝と基質特異性

Date: 2026-01-16 (Fri)

20年前に以下の東大グループによって、イネ科植物からデオキシムギネ酸合成酵素(DMAS)の遺伝子がクローニングされた。(図Bashir et al参照)
Bashir, K., Inoue, H., Nagasaka, S., Takahashi, M., Nakanishi, H., Mori, S.,
et al. (2006) Cloning and characterization of deoxymugineic acid synthase
genes from graminaceous plants. J. Biol. Chem. 281, 32395–32402

今回紹介する論文は、トウモロコシのaldo-keto reductase familyについてのブラジル学派の総説である。
その中の大半はトオモロコシの8種類のDMAS遺伝子の各組織での発現mRNAについて詳細に測定された結果が示されている。鉄栄養研究者にとって大いに参考になると思われるので、詳細な表まで紹介することにした。


トウモロコシのアルドケト還元酵素-4ファミリーに関する機能ゲノミクスと構造的知見:胚におけるストレス代謝と基質特異性

Functional genomics and structural insights into maize aldo-keto reductase-4 family: Stress metabolism and substrate specificity in embryos

Sylvia Morais de Sousa, Priscila Oliveira de Giuseppe, Mario Tyago Murakami et al.

J. Biol. Chem. (2025) 301(7) 110404

要約
アルドケトレダクターゼ(AKR)は自然界に広く存在し、単糖類から潜在的に毒性のあるアルデヒドまで幅広い基質を還元できる。植物では、AKRは反応性アルデヒドの解毒を含む主要な代謝過程に関与している。
本研究の目的は、(i) アルドケト還元酵素-4(AKR4)をコードするトウモロコシ遺伝子ファミリーの解明、(ii) それらの配列と機能のギャップを埋めること、(iii) 胚特異的ストレス代謝に関与するファミリーメンバーに焦点を当てることである。ゲノムワイド解析法を用いてAKR4sをコードするトウモロコシ遺伝子を同定し、3つのサブグループに分類される15個の遺伝子ファミリーを定義・注釈付けした。発現プロファイリングと実験室検証により、以下の機能的役割が明らかになった:
(i) AKR4C Zm-1はストレス時のアルデヒド解毒に関与、
(ii) (ii) AKR4C Zm-2は多様な基質親和性を持つストレス応答性AKRを含む、
(iii) AKR4A/B Zm-3は鉄輸送のための植物性シデロフォアなどの特殊代謝物生成に寄与する。配列変異が機能に与える影響を調査するため、AKR4C Zm-1の代表であるZmAKR4C13を特性評価した。そのmRNAとタンパク質は主に胚に局在し、特殊な役割を示唆した。組換え型ZmAKR4C13はメチルグリオキサールおよび低分子アルデヒドを効率的に還元したが、炭素数4以上のアルドースに対しては活性が低かった。結晶構造解析により、活性部位におけるサイズ制約が同定され、これは294番位置のより嵩高いLEU残基に起因すると考えられた。これらの結果は、活性部位構造の微細な修飾がAKRの基質特異性にいかに影響するかを強調している。また、トウモロコシZmAKR4C13がメチルグリオキサールやその他の小分子代謝物の解毒に関与する可能性を示しており、これらは胚におけるストレスシグナル伝達に寄与し得る。


図. Bashir et al: SAMからデオキシムギネ酸合成に至る経路上のDMAS酵素の位置。


(図1. これは紙面の都合で紹介できないのだが、説明文だけ紹介しておく。
機能的に定義された他植物種のオルソログを有するトウモロコシAKR4の系統解析。トウモロコシAKRは太字の赤色で示され、3つのサブファミリーに分類される。AKR4C Zm-1グループ(ピンク)はアルドースレダクターゼであり、トウモロコシZmAKR4C13を含む。AKR4C Zm-2グループ(緑)にはトウモロコシAKR4C7のようなケトレダクターゼが含まれる。AKR4A/B Zm-3(青)にはトウモロコシDMAS(AKR4B6)およびトウモロコシのAKR4C13のようなAKR4Cが含まれる。
グループ(緑)はトウモロコシAKR4C7のようなケト還元酵素を含む。
AKR4A/B Zm-3(青)はトウモロコシDMAS(AKR4B6)および複雑な二次代謝産物生合成に関わるAKRを含む。配列アラインメントはClustalXバージョン1.83(76)およびMUSCLE 3.7(93)を用いて実施した。系統関係は、LIRMMのPhyML v. 2(http://phylogeny.lirmm.fr)(78)を用いて決定した。
最大尤度法と近似尤度比検定により、分岐支持値の統計的評価を行った。
系統樹はiTOL v. 6.5.1(Itol.embl.de)(79)で可視化した。原産種、機能解析、遺伝子識別子、およびアクセッション番号については表1を参照のこと。
AKR:アルドケトレダクターゼ;DMAS:デオキシムギネ酸合成酵素。)


図2. トウモロコシAKR4遺伝子ファミリーのトランスクリプトームとプロテオームの比較。データは(53)より収集され、qTeller (qteller.maizegdb.org)で入手可能なデータから収集した。左列には、タンパク質および酵素名(AKR命名法で定義されている場合)、遺伝子座(MaizeGDB.orgに基づく)、およびトウモロコシゲノムバージョン5にリンクされた遺伝子識別子が示されている。
背景色は図1および表1と同様に系統群1〜3を示す。Y軸の目盛りは各ファミリーメンバーごとに調整されており、特に存在量が著しく変動するタンパク質では顕著である。X軸には組織起源を示し、図下部に拡大表示して明瞭化している。SAM:茎頂分裂組織;AKR:アルドケトレダクターゼ。]


図3. WT(W22)トウモロコシの生殖組織および栄養組織における6つのAKR遺伝子の相対発現量(qPCRによる定量)。20 DAPの果実から、穎、花柄、移行部、胚、胚近位部、胚乳、果皮(矢状断面図に表示)をサンプリングした。栄養組織は発芽直後の幼苗から採取し、葉、根、胚芽鞘を含む。誤差棒は3つの独立した生物学的複製における平均の標準誤差(SEM)を示す。AKR:アルドケトレダクターゼ;DAP:受粉後日数;qPCR:定量PCR。

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図 Bashir et al

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図2

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図3