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-植物鉄栄養研究会-


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間作から単作へ: ピーナッツと土壌の養分効率を促進するシュードモナス菌株の効果

Date: 2025-04-18 (Fri)

中国農業大学のFuso Zhang教授が、ピーナッツとトウモロコシの間作でピーナッツの生育が促進される、という論文を発表して以来、中国ではこの種の研究が増えている。Fuso Zhang教授が予算の采配権を有しているからと思われる。

これまでの論文での間作効果の見解では、トウモロコシが根圏に分泌するデオキシムギネ酸がアルカリ土壌での難溶性の三価の鉄を可溶化して、それがピーナッツの根に直接吸収されるか、このデオキシムギネ酸がいったんピーナッツの根の表層のFRO2で還元され2価鉄イオンとしてピーナッツの根面の2価鉄イオントランスポーターであるIRT1でピーナッツの根から吸収される、という説であったと思う。

これに対して、この論文はなぜだか理由がわからないが、混植によりピーナッツの根圏でシュードモナス株(Pse.IP6)が発生して、これがピーナッツの生育を著しく促進するという話になっている。このような一連の流れの中でのトリガーとなるべきトウモロコシの根の分泌作用を無視したいようである。

Pseidomonas属には単独で植物の生育に良好な効果があるということは古くからわかっていることである。連作障害が起こらない土壌でがPseudomonasが根圏での主要な菌相であるという話であったと思う。



間作から単作へ: ピーナッツと土壌の養分効率を促進するシュードモナス菌株の効果

From intercropping to monocropping: The effects of Pseudomonas strain to facilitate nutrient efficiency in peanut and soil

Tianqi Wang, Yuanmei Zuo, Kunguang Wang, Nanqi Wang, Dongming Cui, Shiqin Li, Qiaofang Lu

College of Resources and Environmental Sciences, State Key Laboratory of Nutrient Use and Management (SKL-NUM), National Academy of Agriculture Green Development, China Agricultural University, 100193, Beijing, China b a , Root Biology Center, State Key Laboratory for Conservation and Utilization of Subtropical Agro-Bioresources, College of Natural Resources and Environment, South China Agricultural University, 510642, Guangzhou, China

Plant Physiology and Biochemistry 219 (2025) 109378


要旨
油糧種子作物であるピーナッツの収量と品質は、特に中国北部の石灰質土壌における養分欠乏によって厳しく制約されている。トウモロコシとピーナッツの間作は、植物-微生物相互作用を介してピーナッツのミネラル養分効率を高める効果的な戦略であるが、その基礎となるメカニズムはまだ解明されていない。ここでは、インタークロッピングしたピーナッツの根圏から分離した、多様で有益な特性を持つシュードモナス株(Pse.IP6)を用いて実験を行った。さらに、Pse.IP6は、シュードモナスに属するAmplicon Sequence Variants 48 (ASV48)と高い系統学的類似性を示し、間作における植物および土壌中のFeと正の相関を示した。Pse.IP6の植物成長促進能と間作における役割を確認するため、ポット実験を行った。その結果、Pse.IP6はシュートの成長と根の発達を促進し、ピーナッツ葉のSPAD値、純光合成速度、気孔コンダクタンス、および蒸散速度を有意に向上させることが明らかになった。さらに、Pse.IP6の施用により、シュート中の窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)および葉中の活性鉄(Fe)が顕著に蓄積し、K-N比が増加した。 養分促進の主な理由は、根圏における硝酸塩、アンモニウム、P、K、Feの生物学的利用能の向上である。これらの結果を総合すると、Pse.IP6は間作落花生に濃縮され、養分活性化における間作の優位性を単作落花生に移行させることで、植物成長を促進する細菌であることが示された。この結果は、植物と根粒菌の相互作用メカニズムに関する知見を提供し、作物の養分効率と生産性を向上させる根粒菌ベースの経路を提供するものである。

図6. の説明
Pse.IP6を介したピーナッツの栄養獲得促進の概略。Pse.IP6は、間作落花生の根圏から分離されたシュードモナス菌株であり、不溶性リン(P)とカリウム(K)の放出、シデロフォアとIAAの分泌に強い能力を示した。さらに、Pse.IP6はピーナッツの結節形成を促進した。これらの有益な特性により、Pse.IP6はN、P、K、Feの生物学的利用能を高め、ピーナッツの栄養蓄積を増加させる。その結果、Pse.IP6の接種により、間作の利点が単作ピーナッツに移行し、光合成と植物成長が促進される。

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図6