新規合成シデロフォアリガンドProline-2′-Deoxymugineic Acid (PDMA)を用いたイネにおける亜鉛バイオアベイラビリティの向上: 金属結合研究と地球化学的化学種モデリングからの重要な洞察
PDMAは本来鉄キレート材としてアルカリ土壌での施肥に有効であるとして
新規合成シデロフォアリガンドProline-2′-Deoxymugineic Acid (PDMA)を用いたイネにおける亜鉛バイオアベイラビリティの向上: 金属結合研究と地球化学的化学種モデリングからの重要な洞察
Enhancing Zinc Bioavailability in Rice Using the Novel Synthetic Siderophore Ligand Proline-2′-Deoxymugineic Acid (PDMA): Critical Insights from Metal Binding Studies and Geochemical Speciation Modeling
Claudia Rocco,* Motofumi Suzuki, Ramon Vilar, Enrique Garcia-Espana, Salvador Blasco, Gerald Larrouy-Maumus, Colin Turnbull, Matthias Wissuwa, Xuan Cao, and Dominik Weiss
Journal of Agricultural and Food Chemistry
https://doi.org/10.1021/acs.jafc.5c02128
金属と結合する生物学的に利用可能なリガンドは、植物への金属の取り込みを媒介し、潜在的な肥料としての人工リガンドの研究につながっている。プロリン-2′-デオキシムギネ酸(PDMA)は鉄に高い親和性を示し、イネにおける鉄の取り込みを促進し、亜鉛の取り込みを改善するために使用できる可能性を示唆している。本研究では、地球化学的化学種モデリングを用いて、稲作土壌におけるZn II-PDMA錯体形成を制御する化学溶液パラメータ、すなわち酸化還元電位、イオン強度、pH、および配位子/金属濃度について研究した。我々は、PDMAが還元性、塩性、アルカリ性の土壌溶液中で、一般的にZnIIに対して選択的であることを示した。イネにおける最近の微量栄養素の取り込み研究との比較から、遊離PDMAはCuIIやFeIIIとの競合を避けるために還元条件下で添加するか、あるいはpH9以下ではZnII-PDMA錯体として添加すべきであることが示唆された。また、安定なZnII-PDMA複合体を形成するのに必要なZn/M比(M = CuII , Fe III)も同定された。この研究は、アルカリ土壌や氾濫土壌における亜鉛欠乏を克服する肥料としてのPDMAの有望性を示している。
図1.の説明
(a)プロリン-2′-デオキシムギニン酸(PDMA)と2-デオキシムギニン酸(DMA)の化学構造は、3つのカルボン酸基と1つのアゼチジン環が金属イオンと結合して水溶性の八面体複合体を形成するという類似点と相違点(DMAでは4員環のアゼチジン環がPDMAでは5員環に置換されている)を示している。)
(b)PDMAの施肥によってZnの取り込みが増加するメカニズムの模式図。すなわち、安定なZnII-PDMA複合体の形成が示唆され、それに続いて根の黄色ストライプ1(YS1)膜輸送体によってZnの取り込みが促進される。このメカニズムはFeIII輸送の研究に基づいて提案されている。
図2の説明
(a) 選択した遷移列金属とPDMA(本研究),MA(ムギネ酸ファミリー,すなわちDMA,MA,HMA,Murakamietal.31; Weissetal.13)との安定定数(logK)の対数。
(b)Eversら,44 Suzukiら,15および本研究で決定された金属-PDMA錯体の安定定数の対数。
PDMA=プロリン-2′-デオキシムギニン酸,DMA=2′-デオキシムギニン酸,MA=ムギニン酸,HMA=3-エピ-ヒドロキシムギニン酸。
本研究におけるPDMAのlogK値は、1:1M/Lモル比を用いて、NaCl中I=0.15mol/dm3、T=298.1Kで測定した。Eversetalは、I=0.1mol/dm3のNaClまたはNaNO3と1:1M/Lモル比で分光光度滴定を行った。DMA、MA、HMAは、KNO3中I=0.1M、dT=298.1K、モル比1:1M/Lで測定した。
図1
図2
表1