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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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(総説) イネ科植物から分泌される鉄(III)キレート化物質ムギネ酸の構造解析

Date: 2025-02-18 (Tue)

この論文は、日本学士院欧文誌総説100周年記念に対する過去の優秀記事に関する総説です

イネ科植物から分泌される鉄(III)キレート化物質ムギネ酸の構造解析


Review Series to Celebrate Our 100th Volume


Structural determination of mugineic acid, an iron(III)-chelating substance secreted from graminaceous plants for efficient iron uptake

By Takanori Kobayashi and Naoko K. Nishizawa


Proc. Jpn. Acad., Ser. B 101 (2025)
https://doi.org/10.2183/pjab.101.007


概要
鉄は生物にとって必須元素であるが、土壌中での溶解度は極めて低いことが多い。従来、植物は鉄イオンに還元されてから鉄を取り込むと考えられていた。高木は、エンバクやイネが根圏でキレート物質を分泌して第二鉄を可溶化し、効率的に鉄を取り込むことを報告した。1978年、竹本らはオオムギの根から分泌される鉄キレート化合物の化学構造を報告し、ムギネ酸と命名した。ムギネ酸およびその誘導体は、ムギネ酸ファミリーフィトシデロフォア(MAs)と総称され、八面体六配位で第二鉄をキレートする。イネ科植物におけるMAによる特異的な鉄取り込みシステムは、後にR¨omheldとMarschnerによって、非イネ科植物による還元に基づく鉄取り込みのストラテジーIとは対照的に、ストラテジーIIと分類された。日本の研究者らによるMAのさらなる研究は、その生合成経路、対応する酵素とコードする遺伝子、それらの制御メカニズム、鉄欠乏に強く鉄分の豊富な作物の生産を同定することにつながった。


図1. イネ科植物におけるムギネ酸およびその誘導体の化学構造と生合成経路。
本文中で言及した主要分子はハイライトされている。青色の矢印と隣接する青色の文字は、それぞれ生合成反応とそれに対応する酵素を示す。現在、ムギネ酸ファミリーの植物性シデロフォアの他の4つのメンバーが同定されている。

図2.2-デオキシムギネ酸とその類似体であるプロリン-2-デオキシムギニン酸の新規鉄供給剤としての構造

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図1

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図2