WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
転載希望時は連絡先まで

篤農家の(本当は教えたくない)実践テクニック

Date: 2025-02-09 (Sun)

篤農家の(本当は教えたくない)実践テクニック
渡辺和彦・小嶋康詞 著(誠文堂新光社)
定価本体2700円+税
  
  
これは渡辺和彦氏から贈呈された本である。
この本は渡辺さんがこれまで各所で紹介してきた植物栄養学とそれと関連する人体栄養学や環境問題に関する新知識(第一章)と、日本の実践農家を訪問して、その成功事例を紹介したもの(第2章)よりなる。
  
この中の(第2章)の実践農家の成功紹介事例の中には、読者に想像力があれば、その再現性のある現象学的知見を、基礎科学としてさらに掘り下げると面白そうな課題が多数提供されていると思われる。(小生らのムギネ酸研究や、高分子タンパク吸収のメカニズムなどの基礎研究はすでに簡単にではあるが紹介してくれている)
  
とりわけ農学系や環境系の教育に携わる大学教員や研究者には必須の読み物であると確信します。
  
以下に本書の全目次を紹介し、最後の “あとがき”(渡辺さんの述懐)のみを全文紹介しておきます。
  

篤農家の(本当は教えたくない)実践テクニック
渡辺和彦・小嶋康詞 著(誠文堂新光社)
定価本体2700円+税
   
第一章 栄養素の新知識 
  1 消費者庁が硝酸性窒素を機能性成分として認めた
  2 日本の土壌は亜鉛不足、高齢者の3分の1は亜鉛欠乏
  3 アブラナ科野菜は大量のホウ素を要求する
  4 ケイ酸は2015年に、すべての植物に対して「価値ある物質」として認められた
  5 作物のマグネシウム欠乏では根の生育が悪く、
収穫物の品質も低下
  6 鉄は還元状態では2価鉄になり、鉄毒性を示す
  7 CO2が地球温暖化の主要因説はウソ
  8 CHOの積極的な供給
  9 堆肥多量連用で生じるMn欠乏は畑でも水田でも発生。
Mn欠乏植物は、オレイン酸を減少させ、リノール酸を増やす
 10 三要素試験から学ぼう!
    堆肥施肥で水田の収量低下を予防
 11 腐植物質、フミン酸、フルボ酸について正しく学ぶ
 12 硫黄(S)、塩素(Cl)について学ぶ
 13 葉面散布の重要性を学ぶ
 14 迅速養分テストは画期的な優れた技術
  
第2章 篤農家見聞録
  1 長浜憲政さん 宮川多喜男さん
    巨大で高品質なブドウ生産
  2 清田政也さん
    水田転作のポイント教えます!省力多品目栽培のすすめ
  3 橋本直弘さん
    腐植物質のフミン酸、フルボ酸を含む「HS-2,プロ」を使い、
    病気知らずと長期収穫を実現
  4 鈴木良浩さん
    エタノールを含んだ肥料を用いイチゴ栽培3年で
    高い糖度・収量アップに成功
  5 落合良昭さん
    作物がタンパク質を吸収する事実は
    1975年に学問的裏付けがされていた
  6 飯塚正也さん
    多量要素(Mg、S)を含む肥料を用い、
    安定したスイカを栽培
  7 陸野貢さん
    三要素のひとつ、リン酸の葉面散布により、
    「成り疲れ」、病気知らずで安定収量
  8 寺田卓史さん
    エタノール肥料を使って糖度の高い高品質の野菜を生産
  9 大谷武久さん
    BLOF理論でニンジンやカンキツの
    高品質・高収量・高栄養価栽培を実現
 10 中田幸治さん
    フミン酸とフルボ酸で、水稲増収に成功
    ネギの夏季の高温障害対策に活用
  
第3章 フミン酸、フルボ酸の活用術
  ワンヘルスを紡ぐ腐植物質「フミン酸、フルボ酸」
  ―次代の子供たちに良い環境を引き継ぐために―
  
  コラム 自然と共生できる土壌改良剤
  付録 落合良昭さんが実際に使用し効果のあった資材を紹介
   
あとがき
本書の終わりに、私自身について少しだけ記したい。私は以前、東京大学で2年間にわたり6回ほど講義をさせてもらったことがある。その中には教育課程のものもあったが、講義の終了後、一人の学生が私のところまで来て「渡辺先生はなぜ、ここで講義することをたのまれたのですか?」と素直な疑問を呈したのだ。東京大学の卒業生でもない私は、返答に困ってしまった。
 しかし40年もかかったが、その答えが本書にある。この本は、日本中の農業生産量を大幅に上げ、さらに環境も良くする技術を具体的に示している。そして、こうした技術がいずれ世界中に広がると私は確信している。あの時の学生は私を覚えているだろうか。今この本をぜひ読んでもらいたい。40年を経て、彼の疑問はきっと晴れることだろう。
 本書と、これから発表されるであろう青山先生の英語論文をもってするならば、やがて世界中の農業生産量が画期的に増加する時代が来ると私は信じて止まない。それほどに大きな内容、意味を含んでいるのだ。



photo