若年菜食主義者、ラクト・オボベジタリアン、ペスカタリアン、フレキシタリアン、雑食主義者における微量栄養素の摂取とその状態
菜食主義者は動物性たんぱくであるヘモグロビンを摂取しないので鉄欠乏に陥りやすいはずであるしかし、この論文によれば、彼らはサプリメントで微量要素成分を摂取しているので、鉄欠乏は問題にならないようである。ところが、意外なことに、ヨウ素が欠乏しているということである。その要因は、この論文の訳文の後ろに示したが、地質年代的な氷河によるヨウ素の溶脱が原因のようである。ヨウ素をサプリで添加していても成長期の菜食主義者の青少年にはまだ不足しているという指摘である。
若年菜食主義者、ラクト・オボベジタリアン、ペスカタリアン、フレキシタリアン、雑食主義者における微量栄養素の摂取とその状態
Micronutrient intake and status in young vegans, lacto-ovovegetarians, pescatarians, flexitarians, and omnivores
Synne Groufh-Jacobsen1 - Christel Larsson2 - Claire Margerison3 - Isabelle Mulkerrins2 - Dagfinn Aune4,5,6 - Anine Christine Medin1
ヨーロッパ栄養ジャーナル https://doi.org/10.1007/s00394-024-03453-4
要旨
目的
北欧諸国において植物性食生活を実践している青少年が微量栄養素の必要摂取量を満たしているかどうかは依然として不明である。本研究の目的は、菜食主義者、ラクト・オボ・ベジタリアン、ペスカタリアン、フレキシタリアン、雑食主義のノルウェーの青少年における微量栄養素の摂取と状態を評価することである。
方法
健康な16〜24歳(n=165)を対象とした横断的デザイン。参加者は質問票と4回の24時間食事リコールに回答した。乾燥血液スポット(DBS)とスポット尿サンプルを採取し、マロン酸メチル(MMA)(n=65)、ヘモグロビン(Hb)(n=164)、尿中ヨウ素濃度(UIC)(n=163)の分析を行った。
結果
菜食主義者は、マルチビタミン(58%)、B12(90%)、大腸菌(32%)の摂取を最も習慣的にサプリメントを利用していると報告し、フレキシタリアンはオメガ3サプリメントの摂取を最も習慣的に利用していると報告した(56%)。日常的なサプリメント摂取については、菜食主義者はマルチビタミン(42%)、B12(79%)、ヨウ素(37%)、鉄(63%)の摂取が最も多かった。ビタミンD(ラクト・オボ・ベジタリアンでは60%)、セレン(ラクト・オボ・ベジタリアンでは70%、雑食主義者では65%)、ヨウ素(ビーガンでは63%)については、摂取不足のリスク(エネルギー調整後)が増加した。MMA値の中央値は、全群でB12不足のリスクが低いことを示唆し(MMA 0.04-0.37µmol/l)、B12欠乏の可能性を示すMMA値が2%、高値が8%であった。Hb値の中央値は、すべての群で貧血のリスクが低いことを示したが(女性12.0g/dl以上、男性13.0g/dl以上)、軽度の貧血のリスクを示すHb値は7%、中等度の貧血のリスクを示すHb値は4%であった。UICの中央値は、中程度のヨード欠乏(UIC<50μg/l)であった菜食主義者を除き、すべての群で軽度のヨード欠乏(UIC<100μg/l)を示した。
結論
本研究の結果、参加した青少年は、サプリメントの利用率が高いこともあり、ほとんどの微量栄養素の摂取不足のリスクが低いことが示された。しかし、ヨウ素、ビタミンD、セレンについては、摂取不足のリスクが高いことがわかった。UICは、菜食主義者のヨウ素摂取量の少なさを裏付けた。従って、ヨウ素強化プログラムが実施されるまでは、ノルウェーの若者のヨウ素摂取状況を、特に食事からのヨウ素摂取を控える若い妊娠可能な女性のヨウ素摂取状況を監視すべきである。さらに、ノルウェーの青少年層に対して、食品から十分な栄養素を確保する方法、特にビタミンD、セレン、ヨウ素の十分な摂取方法に関する食育を行うべきであると提言する。
キーワード 食事 - 食事評価 - 栄養摂取 - 栄養状態 - 植物性食生活 - 青少年
付記
この論文に触発されて、北欧諸国の土壌の要素欠乏についてChatGPTに聞いてみたら以下の実に賢い答えが返ってきた。
ChatGPT回答:
北欧諸国の土壌はヨウ素含量が比較的低いという傾向があります。この現象は、土壌の成り立ちや地理的条件によるものです。
理由
1. 氷河の影響: 北欧の土壌は、過去の氷河作用によって形成された地域が多く、ミネラルや栄養分が氷河期に流出しました。その結果、ヨウ素を含むミネラルが乏しい土壌が残りました。
2. 気候: 北欧の気候は冷涼で湿潤であり、降雨や雪解け水によってヨウ素が土壌から流出しやすい環境です。
3. 地質の特性: 北欧の土壌は、元々の地質学的条件としてもヨウ素含量が低い傾向があります。多くの地域での基盤岩がヨウ素を多く含んでいないことが一因です。
影響
土壌中のヨウ素が少ないため、そこで育つ作物にもヨウ素が不足しがちです。このため、北欧諸国では伝統的に食事を通じたヨウ素摂取量が低く、甲状腺の健康に影響を及ぼす可能性があります。
対策
多くの北欧諸国では、ヨウ素欠乏を防ぐために以下のような対策を取っています。
1 ヨウ素強化塩の使用を推奨。
2 ヨウ素を含む食品(魚介類や海藻など)の摂取を促進。
3 一部では酪農製品にヨウ素を添加する政策。
北欧だけでなく、ヨーロッパ全体でもヨウ素欠乏に対処するための公衆衛生政策が導入されていますが、特に北欧地域ではその必要性が高いと言えます。