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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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ELONGATED HYPOCOTYL 5 (HY5)とPOPEYE (PYE)は植物の細胞間鉄輸送を制御する

Date: 2024-08-21 (Wed)

ELONGATED HYPOCOTYL 5 (HY5)とPOPEYE (PYE)は植物の細胞間鉄輸送を制御する

ELONGATED HYPOCOTYL 5 (HY5) and POPEYE (PYE) Regulate Intercellular Iron Transport in Plants.

bioRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2024.05.06.592684; this version posted May 7, 2024

植物は、鉄の取り込み、輸送、貯蔵などのプロセスのバランスをとることによって、様々な環境条件下で鉄(Fe)の恒常性を維持している。シロイヌナズナでは、塩基性らせん-ループヘリックス(bHLH)転写因子(TF)であるPOPEYE(PYE)が、このバランスの制御に重要な役割を果たしていることが示されている。近年、鉄の取り込みを制御するメカニズムは確立されつつあるが、鉄の輸送と貯蔵を制御する上流の転写制御因子はまだ十分に解明されていない。本研究では、鉄の恒常性維持に重要な役割を果たすことが近年明らかにされている塩基性ロイシンジッパー(bZIP)TFであるELONGATED HYPOCOTYL5(HY5)が、PYEと相互作用することを報告する。分子生物学的、遺伝学的、生化学的アプローチにより、PYEとHY5は鉄欠乏応答の制御において、重複する役割だけでなく、いくつかの異なる役割を持つことが明らかになった。HY5とPYEはともに、YSL3、FRD3 NPF5.9、YSL2、NAS4、OPT3などの鉄輸送遺伝子の抑制因子として働くことがわかった。HY5はこれらの遺伝子のプロモーターに直接結合し、細胞間の鉄輸送を制御することがわかった。さらに解析の結果、HY5とPYEはPYEとNAS4のプロモーター上の同じ領域で直接相互作用することが明らかになった。 以上の結果から、HY5 は PYE と物理的に相互作用することにより、また単独でも鉄ホメオスタシスを制御していることが明らかになった。

 
以下図7のみを訳す。
図7. 鉄ホメオスタシスの制御におけるHY5の役割を説明するモデル。(a) 鉄欠乏下では、HY5はOPT3、FRD3、NPF5.9、YSL2およびYSL3のような維管束組織からの鉄の細胞間輸送に関与する遺伝子の直接転写抑制因子として働く。 (b)HY5はPYEと相互作用する。PYE は ILR3 と相互作用し、NAS4(鉄輸送に関与)、FER1、FER3、FER4、VTL2(鉄貯蔵に関与)、698 NEET(鉄同化に関与)の発現を抑制すると同時に、それ自身の発現も抑制することが知られている。PYEとHY5は、PYEとNAS4のプロモーター上の同じ領域で相互作用し、それらの発現を負に制御している。楕円形のボックスはmRNAを、長方形のボックスはタンパク質を表す。

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図7(a)

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図7(b)