「はかた地どり」の胸肉が「機能性表示食品」として受理(2019年 9月 11日)された経過
最近届いたばかりの「化学と生物」誌に、九州大学の片倉喜範教授がプロダクトイノベーションという欄に、4ページにわたって、「はかた地どり」の胸肉が「機能性表示食品」として受理(2019年 9月 11日)された経過を語っている。
この申請のプロセスには産官学の巧妙な連携のプロセスがあったことが紹介されている。(図2)
「本品にはアンセリン、カルノシンが含まれます。アンセリン、カルノシンは加齢により衰えがちな認知機能の一部である、個人が経験した比較的新しい出来事に関する記憶をサポートする機能があることが報告されています、という文面を添える形で、機能性表示食品として実際に販売することができた。
最近では「はかた地どり」が福岡県ワンヘルス認証第一号(2022年10月)として、認定されるとともに、「はかた地鳥」胸肉を含むお粥を災害食や非常食へ展開するとともに、「はかた地どり」胸肉ジャーキーを高たんぱく源として有望な食材として販売するなど、「はかた地どり」に販売とその展開に力を入れている。今後はDXを用いた食品の機能性開発の可能性を追求する。
ということです。
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以下いささか長くなりますが。。。
付記1: ところで、この最後の文章にある「DXを用いた食品の機能性開発の可能性を追求する」という意味がよくわからなかったのでAIに聞いてみた。
小生:
DXを用いた食品の機能性開発の可能性を追求するとは、どういう意味でしょうかね?
Copilot(生成AIのこと):
「DXを用いた食品の機能性開発の可能性を追求する」とは、デジタル技術を活用して食品の機能性を向上させ、新たな価値を創出することを指します。
具体的には以下のような活動が含まれます:
データ分析:食品の成分や消費者の食事傾向などの大量のデータを分析し、健康に良い食品の開発や、個々の消費者に合わせた食事提案などを行います。
バイオインフォマティクス:遺伝子情報などの生物学的な情報をデジタル技術で解析し、食品の機能性を科学的に証明したり、新たな機能性を発見したりします。
製造プロセスの最適化:製造プロセスのデータを収集・分析し、品質を一定に保ちつつ、効率的な生産を実現します。
これらの活動は、食品の機能性を科学的に証明し、消費者に対してその価値を伝えることで、健康的な食生活の実現や、食品企業の競争力強化に寄与します。また、これらの活動は産学官連携によって進められることが多く、多様な知識と技術の融合によって、より高度な食品開発が可能となります5。このように、DXを用いた食品の機能性開発は、食品科学の新たな可能性を追求する重要な手段となっています。
ということらしいです。
付記2:この総説の著者である九州大学の片倉喜範教授は東大農芸化学科の出自のようで、読んでいて親近感を覚えました。と、同時に、小生は突然はたと、以下のことを思い出しました。
2−3年前の農芸化学科の名誉教授を囲む忘年会で、小生の横に座っておられた田野倉先生に、現役の某先生が、「先生のところで、カルノシンやアンセリンがアルツハイマーの原因物質と言われているβアミロイドタンパクと相互作用する状態を、MRIで可視化できませんかね?」と相談していたことを小耳にはさんだのです。
カルノシンやアンセリンが抗酸化作用があることは小生も知っていましたが、その話を聞いて、なるほど、これらのdipeptideが、アルツの予防効果があるのかもしれないな、とその時思ったことでした。
案の定、この「はかた地どり」の機能性食品表示の案件の中には
”加齢により衰えがちな認知機能の一部である、個人が経験した比較的新しい出来事に関する記憶をサポートする機能があることが報告されています”とうたわれており、これは、表2にあるように、久山町における大人数の長期にわたる疫学的研究が重要な証拠として採用されたようです。
付記3: 小生の農芸化学科の3年生の時の舟橋三郎先生の生化学の教科書はFuruton and Simons著のBiochemistry であったことは以前にも述べたことがあります。この教科書にカルノシンやアンセリンの上記の構造式が載っていたのをいまでも鮮明に覚えています。渡り鳥の胸肉にこの化合物の含量が非常に多く含まれているので、渡り鳥は遠路を疲れずに飛べるのだ、という話だったと記憶しております。
鶏の胸肉は一番安価な部位なので、積極的に食べようと努力した時があるのですが、何しろ物理的歯ごたえ(テクシュチャー)がぱさぱさでおいしくありません。本日、スーパーの冷凍食品棚を見たら、鳥の胸肉のミンチが安く売られておりました。これにあれこれ加工を加えれば、飽きがこない食品になるのかもしれません。ミンチボールは時々生協から買っているのですが、今でもどことなくなじめませんね。とっさの発想ですが、ミンチボールを焼き団子にでもしたら飽きがこないかもね。しかし、「地どり」ではないブロイラーの胸肉はカルノシンやアンセリンの含量があまり高くない(量はこの総説では紹介されていませんが)ということです。
図2 産学官共同の研究体制