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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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イネの熱波下における鉄ストレス耐性は、光防御機構と光蒸散量の増加が鍵である

Date: 2024-03-05 (Tue)

このブラジルの研究グループの論文は高温ストレス下で鉄過剰が起こることによる酸化ストレスを回避するメカニズムについて 「鉄過剰下で光呼吸が電子シンクとして活性化することは、鉄過剰耐性品種における酸化ストレスを緩和する主要なメカニズムであるようだ」と述べている。現在日本の育種屋さんたちは、地球温暖化による、イネ品種の高温耐性品種の育成に躍起になっていると思われる。彼らの中に、高温による鉄過剰吸収移行がイネの収量低下要因になっているという感覚があるのだろうか。

   
イネの熱波下における鉄ストレス耐性は、光防御機構と光蒸散量の増加が鍵である
  
Photoprotective mechanisms and higher photorespiration are key points for iron stress tolerance under heatwaves in rice
  
Moises Alves de Souza a,*, Lissa Izabel Ferreira de Andrade a, Jorge Gago b, Eduardo Gusm˜ao Pereira c,* a Setor de Fisiologia Vegetal, Departamento de Biologia, Universidade Federal de Lavras, Lavras, Minas Gerais, Brazil b Instituto de investigaciones Agroambientales y de la Economía del Agua (INAGEA), Universitat deles Illes Balears, Palma de Mallorca, Spain c Instituto de Ciˆencias Biol´ogicas e da Saúde, Universidade Federal de Viçosa, Rodovia LMG 818, km 06, Campus UFV-Florestal, Florestal, Minas Gerais, Brazil

Plant Science 342 (2024) 112031

要旨
現在の気候変動シナリオを考慮すると、イネ(Oryza sativa L.)の耐暑性品種の開発は、鉄(Fe)過剰の影響を受ける湛水系での栽培にとって最も重要である。本研究の目的は、高温下でも光合成効率を維持できるイネ品種の鉄過剰に対する耐性の生理学的基盤を調べることである。実験的アプローチとして、2つのイネ品種(IRGA424-鉄毒性耐性品種、IRGA417-鉄毒性感受性品種)を、コントロール(0.019 mM)と過剰鉄(7 mM)の2種類の濃度のFeSO4-EDTAに曝露し、その後、異なる温度(25 ◦C-コントロール、35、40、45、50、55 ◦C)の熱波に曝露した。温度が上昇すると、両品種ともシュートの鉄濃度が上昇し、Rubiscoのカルボキシル化率が低下したが、耐性のある品種ではダメージが少なかった。気孔の制限は、特に感受性品種において、鉄毒性に対する後期反応としてのみ発生した。熱波による温度上昇に伴い、鉄過剰下で光呼吸が電子シンクとして活性化することは、鉄過剰耐性品種における酸化ストレスを緩和する主要なメカニズムであるようだ。鉄毒性および熱ストレスに対する耐性は、非光化学的散逸を駆動する光保護メカニズムの増加と関連している。

以下、図の説明
  
図1. 図1 異なる熱波温度における2品種のイネのシュート中の鉄(Fe)濃度(対照条件:0.019 mM;開シンボル)および7 mM(閉シンボル)。アスタリスクは、温度内におけるFeSO4-EDTA処理間の有意差(p <0.05)を示す。
  
図2. 異なる熱波温度における対照条件(0.019 mM;開シンボル)および鉄過剰(7 mM;閉シンボル)下でのイネ2品種における電解質漏出。アスタリスクは、各温度におけるFeSO4-EDTA処理間の有意差(p <0.05)を示す。
  
図7. 鉄過剰と熱波がイネ品種の光合成に及ぼす主な影響を強調した仮説モデル。両品種とも、鉄過剰と熱波は気孔コンダクタンス(gs)に影響を与え、その結果、正味光合成速度(An)、内部CO2、ルビスコの最大カルボキシル化速度(Vcmax)を低下させ、カルビン-ベンソンサイクルにおけるカルボキシル化のための取り込みと電子輸送速度(Jmax)の間にエネルギー不均衡を生じさせた。光化学系IIの最大量子効率(Fv/Fm)、PSIIの有効量子収率(&#981;PSII)、および見かけの電子輸送速度(ETR)を維持し、膜の損傷を避けるために、耐性品種は光呼吸(Pr)の増加と非光化学消光(NPQ)を示す。

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図1

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図2

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図7