同窓会余話(1)
同窓会余話
以下は年齢差が大きくて年下と話が合わない同窓会から、途中で抜け出して帰りの喫茶店で、K君から聞いた話である。
独身のまま退職したK君は退職後しばらくして某有名介護付き老人ホームに入居した。毎月一人当たり50万円はかかる。
そこは入居当初に15年分の大金を払っておけば、15年以降は住居費がタダで過ごせるということである。最低15年間は毎月50万円ぐらいを支払う能力があるという人生設計がある人のための施設なわけである。
入所当時はいわゆるお上品な「ざーますマダム」がおおくて、食事での会話には辟易した。なんでそんな高尚な人たちがいるのだろうとちょっと肩身が狭くて苦痛だった。
なので、できるだけ飲み屋に出かけて外食していたのだが、コロナで一時期はそれもままならなかった。最近はやっとコロナが5類に移行して解禁されて、あちこちの飲み屋に出かけられるのでほっとしている。
入所後数年になる最近になってわかってきたことは、夫が東大法学部や経済学部の出自の人物が入居者300人のうち3割はいるということだ。これは本当に驚異だったね。公務員生活だけではとてもここに入居できる蓄財ができるわけがないので、彼らは東大卒業後企業人として努力して出世して相当の金もうけをしてきたことがうかがわれる。
もしかしたら定年退職後こういう施設で楽をするために、自分自身のために必死で働いてきたのかもしれない。東大を出て社会のために貢献してきたという矜持を彼らからはあまり感じられない。
旦那が亡くなって独り身になった奥さんたちは、悠々とクルーズ船に乗ったりして、人生を楽しんでいる。
一方で、多様な高齢の層がいるので、彼・彼女たちの老化の進行の度合いを観察することは自分にとっても非常に参考になり興味深いことである。毎日が人間の脳の老化の進行形の様々な先行事例を見て過ごすことになっている。
認知症を発症し始めた女性にはおのずと人々が寄り付かなくなっていくので、彼女たちは寂しそうである。そういう人たちは話しかけるとすごく喜んでくれるのである。
狭い世界なので、できるだけ外に出かけるようにしている。明日は、朋友某東大教授の命日なので墓参りに出かける予定だ。