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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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ゲノムワイド関連研究による干ばつ・高温ストレス下での鉄・亜鉛含有量に関連するコムギのゲノム領域の同定

Date: 2022-12-07 (Wed)

ゲノムワイド関連研究による干ばつ・高温ストレス下での鉄・亜鉛含有量に関連するコムギのゲノム領域の同定

ナラヤナ・バット・デベート1、ハリ・クリシュナ1*、V. P. スニルクマール1, Karthik Kumar Manjunath1、C. N. Mishra2、Neelu Jain1, G. P. Singh2、P. K. Singh1*。
1ICAR-インド農業研究所遺伝学部門、2ICAR-インド小麦・大麦研究所 インド・カルナル、小麦・大麦研究所

Front. Genet. 13:1034947.
doi: 10.3389/fgene.2022.1034947

要旨
小麦は、その穀物栄養品質が世界的に重要な主食作物である。
小麦粒の鉄および亜鉛含量は、干ばつや熱ストレスなどの環境要因に影響される重要な量的遺伝形質である。
IARIの小麦ストレス育種プログラムから得られた295の先進育種系統の表現型評価を,2020-21年の作期にニューデリーで適時灌漑(IR),制限灌漑,遅蒔き条件で行い,対照と処理の両方から穀物鉄(GFeC)および亜鉛(GZnC)含有量を推定した。
ストレス条件下では、GFeCとGZnCが対照区と比較して統計的に有意に増加することが観察された。
35K Axiom Breeder's arrayのSNPsを用いて遺伝子型を決定し、GWAS解析によりマーカーと形質との関連を同定した。
同定された23のMTAのうち、7つがGFeCと、16つがGZnCと連関していた。
インシリコ解析の結果、オーキシン応答因子、根のUVB感受性タンパク質、カリウムトランスポーター、グリコシルトランスフェラーゼ、COBRA、F-box様ドメインなど、植物の様々な代謝、成長、発達活動に関わる重要な転写産物がいくつか発見された。
同定されたMTAは、検証後に分子育種に利用できるほか、微量栄養素を豊富に含む小麦の品種を迅速に開発することにより隠れた飢餓の軽減に役立つと期待される。

結論
本研究で用いた282系統のコムギのGWASパネルにより、GFeC、GZnC、TGWは複合形質であり、定量的に遺伝し、その発現は乾燥や熱ストレスなどの生物ストレス要因に強く影響されることが明らかとなった。
GFeCとGZnCの間には正の相関があり、その高い遺伝率は両形質の同時改良が可能であることを示している。
IR、RI、LS条件下で同定された23のMTAのうち、7つがGFeCに、16つがGZnCに関連した。
これらのMTAは新規候補遺伝子の近傍に位置し、形質に対して直接的あるいは間接的な影響を及ぼしていることが明らかとなった。また、同定されたいくつかの推定候補遺伝子は、メタロシャペロン、根の構造配向、イオン恒常性、生物的ストレス応答などの重要な分子機能をコードしていることが明らかになった。
今後、同定されたMTAをさらに検証し、バイオ品種を開発するためのマーカーアシスト選抜プログラムにおいて有用であると考えられる。

以下の原図のFig3は3つに分割して示している。
この図の説明文は
図3 それぞれの染色体における同定されたMTAの分布と位置(Mb単位)、および関連する形質。

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