WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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転載:伝統の「麦みそ」がピンチ

Date: 2022-11-03 (Thu)

ネットサーフィンしていたら、下記の記事が目についた。その中で、なんと、この愛媛の業者が「麦みそ」に使っているムギが「はだか麦」と書かれていて、いきなり興味を持った。愛媛ではだか麦と云えば「エヒメハダカ」という品種だと思われる。

  この品種は、昔小生が「ムギネ酸」の研究のために、愛媛県の農事試験場から手に入れた品種である。この品種は、培地を鉄欠乏にするとエピハイドロキシムギネ酸、ハイドロキシムギネ酸、ムギネ酸、デオキシムギネ酸を根から大量に分泌する品種で、長く重宝して利用している、非常に愛着のある品種である。

  ゆめゆめ「麦みそ」名が画一的な行政の横暴で撲滅されないことを祈りたい。

  測定したことはないが、この「麦みそ」には上記のムギネ酸類やその前駆体である「ニコチアナミン」などが大量に含まれていて、血圧降下作用(アンジオテンシン阻害作用)があるのではないかとおもわれる。

  もとよりダイズにはニコチアナミンが大量に含まれており、大豆みそ汁にも血圧降下作用があるはずである。塩分が高い味噌汁で高血圧になった、という報告を聞かないのもこのニコチアナミンのせいだと小生は考えている。

  伝統の「麦みそ」にもダイズ原料みそと相当の血圧降下作用があるのではないだろうか。

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麦みそに「みそと名乗るな!」 老舗店あぜん、行政の不可解な指導

毎日新聞2022/11/03 10:00
 愛媛県が10月、宇和島市に伝わる伝統食品「麦みそ」の老舗店に突然、「みそと名乗るな」と迫り波紋を広げている。3代目店主は「古里の伝統的な麦みそが否定されたようで、驚がくとさみしさしかない」と語る。いったい何が問題なのか。取材を進めると、県が判断基準とする法的根拠が不明瞭であり、議論の余地があることが分かった。みその表示をやめるように指導した県も「再検討する」としている。
 
 「当店の麦味噌(みそ)が『味噌』と名乗れなくなりそうです」
 
 愛媛県宇和島市で1958年創業のみそ店「井伊商店」の3代目店主、井伊友博さん(41)は10月26日夜、こみ上げる怒りを抑えながらツイッターにつぶやいた。11月2日現在、投稿への「いいね」は8万以上に上り、反響を呼んでいる。
 
 高齢の両親と3人の家族経営で、創業時からの製法を64年間、守り続けている。10月29日夕に記者が尋ねると、井伊さんは創業時から使う木おけ(直径1・2メートル)から、完成したばかりの“麦みそ”を商品に詰めていた。
 
 店内に掲げられる色紙が目に入る。「日本一の麦味噌屋 井伊商店」。発酵学の第一人者、小泉武夫・東京農業大学名誉教授のサインだ。同店には全国にファンがいるという。
 
 原油高による経営苦に耐えながら仕事を続ける老舗店が今になってなぜ、商品で麦みそやみそを名乗らないよう要求されたのか。井伊さんは、疲れた表情で語り始めた。
 
大豆の使用有無が線引き?
 
 愛媛県の宇和島保健所が2022年7月、年に一度の商品や添加物を調べる検査の際に、井伊商店の麦みそに大豆が使われていないことに気付いた。食品表示法の食品表示基準では、みそや麦みそは、大豆を使って作るものとされている。同保健所は8月末、店の品名にミスがあると指摘し、改めるよう助言した。
 
 これとは別に県南予地方局は10月13日付の文書で、「景品表示法違反の優良誤認に当たる」として改善を指導。「大豆を使用していないため『味噌』『麦みそ』と表示することは食品表示基準に違反しており、一般消費者に、実際のものよりも優良であると示すものである」と理由を説明し、パッケージなどでみそ、麦みそと表示しないように求めた。
 
 井伊商店の特徴は、生産量で35年間日本一の愛媛県産「はだか麦」と塩で、大豆を使わずにみそ作りをすること。地域に伝わる独自製法でもあるという。宇和島市からも、地場産品として、ふるさと納税の返礼品に認められたばかりだ。大正時代から続く、別のみそ店などと「『宇和島麦みそ』として、特産品に育てようとしていた矢先だった」と肩を落とす。
 
 「半世紀以上、指導はなかった。今更、何やねん」
 
 井伊さんは「宇和島麦みそ」文化の存続を求める要望書を出すことを決意。「納得がいかない」と、同様に指導を受けて憤慨する宇和島市内の企業と計3社の連名で同25日、愛媛県に提出した。
 
「『宇和島麦みそ』が『味噌』と名乗れなくなるのは伝統製法の消滅」と思いの丈をつづった。
 
 だが、県の担当者からは「愛媛県は法律に従うしかない。裁量の余地がない」と素っ気なく突き返された。
 
消費者庁、一般論では問題ないとの見解

 景品表示法を担当する消費者庁はどう考えているのか。担当者は「改善指導などの権限は都道府県にあり、個別事案にはコメントできない」と断った上で、景品表示法は「商品名に制限を加える法律ではない」と説く。健康に良いみそで血圧が抑えられるとうたっているのに、実際はそうではないなど、商品内容を実態よりも明らかに優良であると示していない限りは違反にあたらないという。「商品名だけで言えば(パッケージなどに『みそ』『麦みそ』と名乗れないことは)普通はないと考える」。基本的に広告宣伝活動として、表記は自由が保たれているためという。
 
 一方、食品表示法は、食品の安全性確保などを目的とし、食品表示基準に従って名称▽原材料▽産地――など必要な情報を一括でパッケージの裏側などに記載するよう義務付けている。だが、同法を担当する消費者庁の担当者は「一括表示欄の“枠外”に記載する名称の表記について制限することはできない」と説明する。
 
 改善を指導した県南予地方局は10月29日に会社に求めた報告書の提出を保留にした。取材に「いったん指導をした諸手続きを今後、どう処理するかは協議中だ」と説明している。
 
 景品表示法に詳しい岡山大法科大学院の佐藤吾郎教授は「麦みその商品の表示をみて、一般消費者がとても良いと認識するか否かが問題になる」と指摘。愛媛県の判断については「議論の余地がある。どのような事実に基づいて、判断したかは明確ではないからだ」と話す。

 小麦だけで製造される「沖縄そば」が地域ブランドを保護する地域団体商標制度を利用して、そばの商品名を使っている事例を挙げて「地域ブランドの育成・維持の観点から、麦みその名称を継続して使えるような方策を考えるべきだ」と提唱する。

  井伊さんは「『応援してる』『負けるな』と、全国から励ましの声に勇気をもらう。宇和島の麦みそを残せる光が見えるよう、歴史的な裏付けを調べるなど解決策を模索したい」と話す。
【鶴見泰寿】