WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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作物生産のための根粒菌バイオ肥料 過去・現在・未来

Date: 2022-10-18 (Tue)

以下の総説では、アフリカとインドの研究者たちが、「生物肥料こそ未来を切り開く」持続可能な肥料である、と、大向こうを張った論陣を展開している。確かに最近東大の妹尾啓史教授の研究室の鉄還元能を持つ窒素固定菌などの発見は、その端緒を切り開くものかもしれない。植物根と根圏土壌菌との関係の研究課題が必須になってきた。福岡正信氏の不耕起「わら一本の革命」(1975年初版)の実体が徐々に解明されつつあるのかも知れない。
  

作物生産のための根粒菌バイオ肥料 過去・現在・未来

Becky N. Aloo 1、Vishal Tripathi 2、Billy A. Makumba 3、Ernest R. Mbega 4
1 Department of Biological Sciences, University of Eldoret, Eldoret, Kenya, 2 Department of Biotechnology, GLA University, Mathura, Uttar Pradesh, India,
3 Department of Biological and Physical Sciences, Moi University, Eldoret, Kenya,
4 Department of Sustainable Agriculture and Biodiversity Conservation, Nelson Mandela African Institution of Science and Technology, Arusha, タンザニア
 

(概要)

ここ数十年、人口増加に伴う世界的な食糧需要に対応するため、農業生産が増加している。
しかし、従来の農法は人工肥料に頼っているため、人体や環境に多くの影響を及ぼしている。
このような背景から、持続可能性の研究者や環境保護主義者は、他の作物への施肥メカニズムに注目するようになった。
バイオ肥料は、土着の植物成長促進根粒菌(PGPR)からなる微生物製剤で、土壌養分を可溶化し、植物成長促進ホルモンやシデロフォアと呼ばれる鉄分阻止代謝産物を生産することにより、直接または間接的に植物の成長を促進する。
バイオ肥料は、世界の多くの作物の生産に利用され、研究され、推奨され、そして成功している。
特に、人工肥料に起因する気候変動の影響を受けて、これらの微生物産物は持続可能な作物生産ツールとして大きな可能性を秘めている。
しかし、この技術への関心が高まっているにもかかわらず、その潜在能力はまだ十分に発揮されておらず、利用はまだ初期段階にあるように思われる。
バイオ肥料の過去、現在、そして将来の展望に光を当て、その理解と実用性を高めることが必要である。
本総説は、PGPRバイオ肥料の歴史を評価し、その現在の利用状況を評価し、持続可能な作物生産におけるその将来性を批判的に提唱するものである。
したがって、作物生産におけるPGPRバイオ肥料の進化に関する我々の理解を更新するものである。
このような情報は、その可能性の評価を容易にし、最終的には利用拡大への道を開くことができる。


(結語)

21世紀における世界最大の課題は、持続可能な農業のあり方を考案し、実践することである。
これは、効率的な根粒菌バイオ肥料の使用など、変化する先端技術に対応する場合にのみ達成可能である。
本論は、持続可能な農業システムの開発に役立つものである。
このようなバイオリソースの使用は、世界のいくつかの地域で実践されているものの、まだ少ない。しかし、結果は有望であり、その効率を高めるために開発の余地がある。
時間が経てば、バイオ肥料は確実に成長し、近いうちに巨大な市場の可能性を持つようになると予測されている。
研究者、農業機関、大学は、バイオ肥料の開発を迅速に進め、その使用と持続可能な農業慣行への適応を促進することができる。
バイオ肥料製品の規制、政策開発、社会的受容性に関連する問題が同時に解決されれば、これらのバイオベースのツール(生物起源の資材)は、持続可能な農業生産性に潜在的かつ大きく貢献することが可能である。

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