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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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NaCl条件下における鉄欠乏イネ苗のクロロフィル蛍光特性に及ぼす葉面鉄肥料の濃度差の影響

Date: 2022-06-20 (Mon)

NaCl条件下における鉄欠乏イネ苗のクロロフィル蛍光特性に及ぼす葉面鉄肥料の濃度差の影響

Dapeng Gao, Cheng Ran, Yunhe Zhang, Xiaolei Wang , Sifei Lu , Yanqiu Geng , Liying Guo , Xiwen Shao

Plant Physiology and Biochemistry 185 (2022) 112–122

鉄の有効性は塩類条件下で低下するため,イネでは容易に鉄欠乏に陥り,光合成が阻害される。
本研究では,4週齢の鉄欠乏イネ苗をNaCl(50 mM)下で,異なる濃度(0, 0.2%, 0.4%, 0.8%, 1.6%, 3.2%)の葉面鉄肥料(FeEDDHA)にて処理した。
処理7日後のイネ葉のプロンプト蛍光とMR820シグナルの差異をJIP-testを用いてプローブした。
その結果、2つのイネ品種の性能は概ね一致した。
鉄欠乏およびNaCl条件下では、イネの成長が阻害され、色素量、比エネルギー束、量子収 率、活性PSII反応中心の性能(PIABS)およびPSIの酸化速度(Vox)および還元速度(Vred)が低下した。
これらの指標は、鉄肥料の濃度が高くなると、まず増加し、次に減少した。
最も良い結果が得られたのは、Fe3処理(0.8%)であった。
相対可変蛍光量(WKおよびVJ)やエネルギー散逸量子収率(φDo)などの蛍光パラメータは、逆の傾向を示した。
このことから,鉄の欠乏・過剰とNaClストレスは,光化学系の電子・エネルギー輸送を阻害することが示唆された。
適切な鉄の施肥濃度は,光合成電子輸送系を修復し,電子輸送効率を向上させ,バランスのとれたエネルギー配分を促進することができる。
したがって,光化学系の電子・エネルギー輸送特性の改善には適量の鉄が有効であり,イネの耐塩性向上には高濃度の鉄肥料の散布がマイナスに働くことが示唆された。

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