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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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鉄依存型と鉄非依存型の協調的なメカニズムによるフミン酸によるイネ科植物の鉄クロロシスの軽減

Date: 2022-05-02 (Mon)

フミン酸の効果に関する研究は、きわめて古く、また絶えず新しい手法での読み替えが行われるべきものである。
図2に紹介されているゼアチンに関しては、フミン酸そのものにゼアチンが含まれているという研究がはるか30年ほど前に
日本肥糧の森山博司君の東大での博士論文に掲載されていた記憶がある。
   
      
鉄依存型と鉄非依存型の協調的なメカニズムによるフミン酸によるイネ科植物の鉄クロロシスの軽減
 
Humic Acid Alleviates Fe Chlorosis in Graminaceous Plants Through
Coordinated Fe-Dependent and Fe-Independent Mechanisms

Maria Garnica, Roberto Baigorri, Sara San Francisco, Angel M. Zamarreño and Jose M. Garcia-Mina

Frontiers in Plant Science | www.frontiersin.org 1 February 2022 | Volume 13 | Article 803013

   
(要旨)
石灰質土壌で栽培された植物の生育に対する土壌および堆積フミン酸の有益な作用と、鉄の植物栄養を改善する能力との間に密接な関係があることが多くの研究で示されている。
これらの結果は、フミン酸(HA)が鉄の溶解度と生物的利用能を向上させたことに起因すると考えられている。
しかし、鉄欠乏下の植物の根で活性化される特定のメカニズムに対する腐植酸の作用に関連するなどの効果を否定することはできない。
この問題は、双子葉植物では研究されているが、イネ科植物では具体的な研究がない。
ここでは、泥炭から抽出した腐植酸(HA)が、鉄欠乏および鉄十分な条件下で栽培されたコムギ植物の鉄栄養を改善する能力を調査した。
その結果、HAは、植物の発達に対する鉄欠乏の有害な影響のいくつかを緩和し、植物のフィトシデロフォアを養液に分泌する能力を高めることによって、鉄欠乏小麦植物の生理状態を改善できることが分かった。
このHAの作用は、葉における鉄活性プールの増加と関連しており、これはHAと養液中のフィトシデロフォアとの相互作用から生じるHAと錯形成した鉄の移動に関連しているのかもしれない。
葉の植物ホルモン(トランスゼアチンリボシド(tZR)の濃度は、鉄欠乏植物においてHAによって増強されたことから、根から地上部への鉄の移動は、トランスゼアチンリボシド(tZR)の作用が有利に働いたと考えられる。
 
(図1。の説明)
植物中のABA濃度に対するFe欠乏とHAの影響。
(A)最初の実験の幼植物における結果。
(B)第1実験の根における結果
実験{1回目の実験の処理。Feを含む植物[(+) Fe]; Feを含まない植物[(-) Fe]; Fe+HAを含む植物[(+) Fe + HA]; Feを含まないでHAを含む植物[(-)
Fe+HA]}とした。
(C)2回目の実験のシュートにおける結果。
(D) 2回目の実験の根における結果{2回目の実験の処理。Feを含む植物 [(+) Fe];Fe を含まない植物 [(-) Fe]; Feを含まない植物+HA [(-) Fe + HA]; 12.5 mM Feを含む植物 [(-) Fe + 12.5 ]}. 各データは、1処理あたり23株の3回繰り返し実験の平均を表す。棒グラフは平均値(SD)の標準偏差を表す。異なる文字は、各回の処理間の有意差を示す(P < 0.05)。
 
 
(図2。の説明)
鉄欠乏症イネ科植物に対するHAの有益な作用について提案されたメカニズム。
第1に、HAはフィトシデロフォア(PHS)の養液への放出を促進する。第2に、PHSはHAと複合化した鉄と相互作用し 鉄の根への吸収を促進する。第3に 葉の総鉄と活性鉄の濃度が増加し、鉄のクロロシスの軽減に関係する。これは鉄クロロシスの軽減に関連している。第4に、鉄の根から地上部への移動は 葉におけるHAを介したtZRの増加によって促進される可能性がある。

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図1

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図2