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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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長距離移動性mRNA CAX3は鉄の取り込みと亜鉛の液胞への局在化を調節する

Date: 2022-04-01 (Fri)

以下の論文は師管中のmRNAが鉄や亜鉛の制御に関係しているシグナル伝達物質であるという内容である。昔の植物栄養肥料学教室の茅野充男グループの師管内容物の研究内容がきちんと引用されている。当時師管にRNA様化合物が存在する意味が全く分からなかったのだが、その機能が徐々に解明されつつある。


長距離移動性mRNA CAX3は鉄の取り込みと亜鉛の液胞への局在化を調節する
 
Long-distance mobile mRNA CAX3 modulates iron
uptake and zinc compartmentalization
 
 Pengbo Hao, Xinmin Lv, Mengmeng Fu, Zhen Xu, Ji Tian, Yi Wang , Xinzhong Zhang, Xuefeng Xu, Ting Wu, Zhenhai Han
   
EMBO Reports (2022) e53698
 

(要旨)
植物の鉄欠乏は、亜鉛の過剰吸収を引き起こすことがある。しかし、そのメカニズムの詳細はまだ解明されていない。今回、我々はMdCAX3 mRNAが植物葉から根に輸送され、このMdCAX3はMdCXIP1によって活性化されることを報告する。MdCAX3の発現を抑制すると、鉄欠乏に関連する根のアポプラストのpHを上昇する。
注目すべきは、MdCAX3を過剰発現させても、MdCXIP1プロモーターに欠失を持つ変異体であるMdCXIP1欠損機能 Malus baccata (Mb) のアポプラストのpHに影響を与えないことである。
Mbでのこの欠失はMbでのMdCXIP1発現を弱める。MbでのMdCAX3とMdCXIP1の共発現により根のアポプラズムpHを低下させることがわかった。
さらに、MbのMdCAX3を抑制することにより亜鉛の液胞への局在を有意に減少させる。 また、MdCXIP1によって活性化されたMdCAX3は鉄の取り込みに関係するばかりでなく、亜鉛を液胞に局在することによって、鉄欠乏により誘起される亜鉛の解毒を制御する。
このように移動性MdCAX3 mRNAは、鉄欠乏(飢饉)に対応した鉄および亜鉛の
ホメオスタシスの制御に関与している。
 
 
 
図8.の説明
移動性MdCAX3 mRNAの長距離輸送が、鉄欠乏(飢餓)時の鉄吸収とZnのコンパートメント化の両方を調節するモデルの提唱。
鉄欠乏状態では、MdCAX3 mRNAは葉から根へ葉脈を通じて連続的に輸送され、根で翻訳され、タンパク質に変換される。
亜鉛イオンを液胞に送り込み、局在化して解毒を行う。これにより、亜鉛過剰によるMdIRT1の分解が緩和され、PM H+-ATPaseが促進されプロトンをアポプラストに送り込み、根圏の酸性化を促進する。Mbでは、MdCXIP1の欠如により、このプロセスが阻害される。

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図8.論文の取りまとめ図