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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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ニコチアナミン(NA)の生合成を通じてYangサイクルと鉄のホメオスタシスを結びつけるトウモロコシの葉脈間葉緑素1(ZmMIC1)遺伝子

Date: 2022-03-10 (Thu)

以下の論文を訳すに際して、現在狂犬プーチンによるウクライナ侵略の最中なので、小生の心に余裕がなく、翻訳に十分な時間が取れない。今回は原著論文のうちの第9図のみを訳しておいた。Yangサイクル中の中間産物であるMTAが集積するとNA合成酵素活性を阻害するという知見を報告している。


ニコチアナミン(NA)の生合成を通じてYangサイクルと鉄のホメオスタシスを結びつけるトウモロコシの葉脈間葉緑素1(ZmMIC1)遺伝子

Maize Interveinal Chlorosis 1 links the Yang Cycle and Fe homeostasis through Nicotianamine biosynthesis

Wentao Sun, Xiaojin J. Zhou ,Chen Chen, Xin Zhang, Xiaolong Tian , Ke Xiao,
Chenxu Liu , Rumei Chen 2, and Shaojiang Chen
 
PLANT PHYSIOLOGY 2022: 00: 1–15
 

Yangサイクルは、植物の成長・発達に不可欠な多くの代謝経路に関与している。Yangサイクルの延長線上にあるエチレンとポリアミンの機能と制御ネットワークは、よく知られている。ニコチアナミン(NA)もこのサイクルの産物であり、植物における鉄(Fe)の恒常性維持に重要な金属キレーターとして働いている。しかし、YangサイクルとNAの生合成の相互作用については、依然として不明な点が多い。我々は、5’-メチルチオアデノシンヌクレオシダーゼ(MTN)をコードするトウモロコシ葉脈間クロロシス1(maize interveinal chlorosis 1 :mic1)遺伝子をクローニングし、この遺伝子がトウモロコシ(Zea mays)の5’-メチルチオアデノシン(MTA)の回収とNA生合成に不可欠であることを明らかにした。mic1の第4エキソンでは、1塩基のG-A転移によりGlyからAspに変化し、MTAの増加、鉄の分布の減少、苗の成長遅滞が生じる。CRISPR/Cas9によるZmMIC1のパラログであるZmMTN2ではなくZmMIC1自身をノックアウトすると葉脈間クロロシスを引き起こすことから、ZmMIC1がトウモロコシのMTN活性に主に関与していることが示唆された。トランスクリプトーム解析では、典型的な鉄欠乏応答遺伝子発現が示された。しかし、代謝産物の解析の結果、mic1ではNA含量が劇的に減少しており、NA生合成が劇的に損なわれていることが示唆された。NAを外部から投与すると、mic1変異体の葉脈間葉緑素表現型は一過性に回復した。さらに、NA合成酵素遺伝子を過剰発現させたmic1変異体は、葉脈間クロロシスと生長遅延から回復しただけでなく、受精可能であった。これらの知見は、YangサイクルとNA生合成の関連を示し、トウモロコシの鉄のホメオスタシス制御の一面を浮き彫りにするものである。



(図9 の説明)
YangサイクルとNAの生合成の相互作用のワーキングモデル
WTでは、NA合成の大流量を維持するために副産物であるMTAはMTNによって加水分解され、Yangサイクルに回収される。しかし、mic1では、ZmMTN1の変異により、MTAの回収が阻害されていることが判明した。
その結果、蓄積されたMTAがNASの活性を抑制していることがわかった。
NAの供給不足は、鉄欠乏と葉身のクロロシスを引き起こした。
鉄の欠乏は、葉脈のクロロシスに関連する酵素の発現を誘導した。
DMAの合成を促進する一方で、NAの消費を促進した。酵素は青色で、化合物は黒文字で表されている。
黒い矢印・線はこれまでに報告された経路を、黒い文字で表した。
赤線/矢印は、今回mic1変異体で確認された制御を示す。

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図9