WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
転載希望時は連絡先まで

高いCO2への短期的な暴露はダイズ植物の生育と代謝応答を促進し、初期段階の鉄欠乏症症状を緩和する

Date: 2022-02-02 (Wed)

以下の論文は大気圏炭酸ガス濃度が増加している現況にかんがみ、炭酸ガス濃度の増加が鉄欠乏の修復に関係があるかどうかを室内実験したものである。初期生育の鉄欠乏ダイズに対して高濃度炭酸ガス濃度を供与すると、一時的に鉄欠乏が回復するという面白い知見を得ている。因果関係は不明であるが。
   
高いCO2への短期的な暴露はダイズ植物の生育と代謝応答を促進し、初期段階の鉄欠乏症症状を緩和する

Short-term exposure to elevated CO2 stimulates growth and metabolic responses that alleviate early-stage iron deficiency symptoms in soybean
 
Jose.C. Soares, Manuela Pintado, and Marta W.Vasconcelos Crossref
 
JOURNAL OF PLANT INTERACTIONS 2022, VOL. 17, NO. 1, 50-59
https://doi.org/10.1080/17429145.2021.2011445
  
  
(要旨)
高濃度CO2(以後eCO2と呼称する)は植物バイオマスを増加させるが、栄養損失につながる可能性がある。我々の実験結果では、Fe欠乏症の下でのeCO2は個体あたり0.37-0.80 gの根乾燥重量と、0.82-2.10 gの地上部乾燥重量を、地上部/茎葉部比を損なうことなく促進した。一方では、eCO2はFe欠乏植物のクロロフィル含有量を改善した。しかし、光合成のダウンレギュレーション、気孔の伝導率の低下、蒸散速度の低下および水利用効率の向上が認められた。さらに、Fe欠乏かつeCO2下では根のKとMg、葉のMgを減少させ、一方、根と葉のPとZnを増加させた。Fe-十分条件下の植物では、eCO2で葉のK、P、Mn、ZnおよびFeを増加したが、根での濃度は変わらなかった。FCR活性の増加やFe獲得遺伝子の発現をなど根のFe欠乏症誘導性応答はeCO2によって刺激された。しかし、これらはFe欠乏植物におけるFe濃度を増加するのには十分ではなかった。
 
 (実験方法と実験結果は省略する) 
  
(結論)
我々は、eCO2濃度の変化およびFe-供与はダイズの形態学的、生理学的、および分子的応答のセットを誘導することができることを示した。
eCO2付与はダイズ植物のFe欠乏症への適応に決定的な影響を与える。我々の結果によると、バイオマス蓄積はeCO2によってFe-供与に関係なく有意に増加した。したがって、我々の結果から、eCO2がFe欠乏症の症状を緩和し、少なくとも植物の初期の発達段階で通常Fe欠乏症に最も敏感である時期の石灰質土壌で成長した植物のバイオマス増加を支えるのかもしれない。
Fe欠乏性クロロシスを誘発するアルカリ性および石灰質土壌上で成長したダイズ植物の、eCO2の下での応答を再現することは興味深いことである。
十分なFe供給下でのいくつかの無機元素の取得が改善されたことは、eCO2は葉への元素の不均衡な移行を支援することができるのかもしれない。
eCO2 はまた、Fe欠乏性クロロシスを緩和し、Fe-獲得機構を増強するが、Fe欠乏状態で成長した植物のFeステータスを高めるには十分ではない。
これらの観測された効果が長期的な暴露の下で持続するのかどうか、そしてeCO2のこれらの報告された影響がダイズ粒の栄養価に関していかなるものであるかを理解することは将来有意義なことである。

(以下図の説明)
 
図 1.aCO2養液(400 ppm) および eCO2(800 ppm)で育った大豆植物。完全な栄養溶液で7日間前処理を行った後、植物をFe-十分(20 μM Fe-EDDHA)およびFe欠乏状態(0.5 μM Fe-EDDHA)に12日間移した。
 
図 2.Fe-供与(0.5および20 μM Fe-EDDHA)および大気中CO2に応じて、栄養溶液中で成長した大豆植物のSPAD測定値(a)と草丈(b)。濃度(400および800 ppm)。
 
図 3. Fe-供与(0.5および20 μM Fe-EDDHA)および大気中CO2濃度(400および800 ppm)に応じて、養液中で成長した大豆植物の根(a)、バイオマス(b)および根/茎葉比(c)。
 
図 4. Fe-十分(20 μM Fe-EDDHA)およびFe欠乏(0.5 μM Fe-EDDHA)条件で栽培されたダイズ植物に対するeCO2のFCR活性に対する効果。
 
図 6. Fe-十分(20 μM Fe-EDDHA)およびFe欠乏(0.5 μM Fe-EDDHA)の条件で成長したダイズ植物の多量元素濃度に対するeCO2の効果。
   
図7。Fe-十分(20 μM Fe-EDDHA)およびFe欠乏(0.5 μM Fe-EDDHA)の条件で成長したダイズ植物の微量必須元素濃度に対するeCO2の効果
  

photo

photo

photo