WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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栽培品種のホウレンソウよりも薬効に適合した高鉄含量ホウレンソウ(Blitum virgatum L.)の集団に関する初の報告

Date: 2021-11-29 (Mon)

以下の報告は高地山岳地帯の野生のアカザ科の群落を平地にもってきて温室栽培で馴化して、高収量で鉄含量の高い栽培株に7年かけて品種改良したほうれん草を作出したという報告である。クラシックな育種法であるが、野菜で高鉄含量に狙いを定めて品種改良した例は、これまで聞いたことがない(森敏 記)
   
    
  
栽培品種のホウレンソウよりも薬効に適合した高鉄含量ホウレンソウ(Blitum virgatum L.)の集団に関する初の報告

The first report of iron rich population of adapted medicinal spinach (Blitum virgatum L.) compared with cultivated spinach (Spinacia oleracea L.)

AliAmmarellou & Valiollah Mozafarian

Scientifc Reports | (2021) 11:22169
 
(要旨)
ハーブや天然産物である民間薬は世界中でのあらゆる文化圏で何世紀にもわたって用いられてきた。

1500種類もあるアカザ科は世界規模で繁殖している。

イランの野生のホウレンソウ(Blitum virgatum L.)は、重要な伝統的薬用植物は貧血やその他の呼吸器流行性感染症などの抗ウイルス病に対して用いられてきた。

この植物は3000m以上の山岳地帯に生息しているハーブである。

我々はこのイランの野生ホウレンソウの野生の母集団からmass selection plant breeding program(集団選抜育種プログラム?)を2013-2020にかけて実施した。

室内実験や野外実験の特徴らこの植物をB. virgatum, |abbaricum|と同定し、International Union for the Protection of New Varieties of Plants (UPOV)と照合してそれに関連した性質を備えていると考えた。そこで薬用ホウレンソウmedicinal spinach (MSP) と名付けた。

選抜集団のミネラルを栽培ホウレンソウ(Spinacia oleracea L. |Varamin 88|)のミネラルをそれぞれ室内ポット栽培と野外栽培で比較した。
第5葉のときに葉と根頭部を分析に供した。

Fe, Zn, Mn, Cuを原子吸光法で測定した。
その結果(MSP)は509ppmの鉄を含みそれは栽培株の3.5–4倍であった。

鉄は必須元素として呼吸器系、エネルギー代謝、コラーゲン合成、そして適当な免疫作用のための神経伝達に必要であるので、吸収可能な適切な鉄の供給は非常に重要である。

COVID-19パンデミックは肺の酸素交換に影響することや、歴史的にMSPが貧血に利用されてきたという地方での証拠等を踏まえれば、人類の祖先が行ってきた人体実験を現代科学研究に追加研究することは新しい地平を切り開くことになりうるだろう。
 
 
図1.
B. virgatumと普通栽培種のホウレンソウとの種子のサイズ、色、の比較。
(A) 乾燥種子, (B)未熟乾燥果, (C)完熟乾燥果,と栽培ホウレンソウ種子
 
 
図2。
2種類の実験植物。[(A) 栽培種, (B) 野生種] と温室実験[(C)栽培, (D)野生種].
植物の形態的特徴[(E) 栽培種 and (F) 品種改良した栽培種]。
栽培品種化されたホウレンソウの農業利用(G)。集団選抜時の初期に選抜されたホウレンソウの野外実験(H)。Gの人物はこのプロジェクトの研究者であるAli Ammarellou。
 
 
図3。
野生の母集団のサンプル(A)と集団選抜して栽培品種化した集団(mass-selected domesticated population )(B), 普及ホウレンソウ新種Varamin 88(C), 栽培品種化された品種の花序(D), 栽培品種の花序(E), 集団選抜された完熟果(F)。
 

図4。
野生のホウレンソウを温室栽培に適応させるためのいくつかの実験。いくつかの遺伝型は栽培条件に適合せず枯死したりすぐに萎びたりした。各世代で約20%の個体数が非山岳条件や非土着条件に適合しなかった。
 
 
図5。
集団品種選抜での様々な生育ステージ。(A)幼植物の地下部の状態, (B, C)MSPの完全実生,(D)生育後期, (E)果実期, (F)果実の中の種子


図6。
7年間に及ぶ野外での集団選抜プログラムで得られた多収穫品種(MSP) [(A) a:栄養成長期 b:生殖成長期],完熟果実(B), MSPの収穫された葉(C)と導入された品種の種子(D).





表1 栽培品種(CSP)と薬用ホウレンソウ(MSP)の外見と形態学的特徴


表2. 集団選抜品種(MSP) と栽培品種(CSP)の 鉄 (Fe),亜鉛 (Z), マンガン (Mn), 銅 (Cu)の濃度(ppmまたはmg/kg-乾物重)。

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