WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
転載希望時は連絡先まで

陸上植物の発達と進化におけるYABBY遺伝子

Date: 2021-11-21 (Sun)

陸上植物の発達と進化におけるYABBY遺伝子

YABBY Genes in the Development and Evolution of Land Plants
Marina A. Romanova, Anastasiia. Maksimova, Katharina Pawlowski and Olga V. Voitsekhovskaja
 
Int. J. Mol. Sci. 2021, 22, 4139. https://doi.org/10.3390/ijms22084139
 
(要約)
ゲノムDNAや転写物解析から陸生植物sporophyte(胞子体)の形態形成を制御している遺伝子ネットワークの多くは広義の意味でstreptophyte 藻類やbryophyte(蘚苔類)のgametophyte(配偶体)にすでに存在しているものからco-opted(共選出)されてmodify(修飾)させられたものである。
しかし、これまでに、3次元から2次元への成長パーン変化、すなわち“平面化”(“planation”)に関わる候補遺伝子は同定されてこなかった。
テロム(維管束植物の構造単位)説によれば葉の進化の過程において、葉身の生成にとって“planation”が必要であった。
被子植物の葉身の発達にとって必要な転写因子はYABBYタンパクであり、これは最近まで種子植物に特有なものと考えられてきた。
しかし、緑藻のYABBYホモログの同定や、小葉植物(lycophytes)やマツモ(ツノゴケ)で最近発見されたYABBYホモログは、YABBYタンパクが陸生植物のかつて祖先にすでに存在していたことを示唆している。
したがってこれらの転写因子は“planation”に関係している、すなわち葉の起源についての理解を促してくれる。
ここで我々はangiosperms と gymnospermsの栄養成長期と生殖成長期におけるYABBYタンパクの作用とlycophytesの発達に関する最近のデータを整理してみた。
さらに、初期に多様に広がった陸生植物の多細胞地上部成長点の形成や葉の進化におけるYABBY タンパクの暫定的な役割について論じる。
  
 
 
(以下図の説明:いくつかの形態学用語は不正確かもしれない)
  
図1。陸生植物の胞子体の葉の起源に関する仮説の要約
(A) 葉がないrhiniophyteの先祖。(B,C) 葉が欠失しているテローム(維管束植物の構造単位)に皮層と表皮細胞を創出しながら段階的に葉の原基が出来ていく。端末から側位に胞子嚢が置き換わる。
(D,E)続けて起こる葉の原基。葉のない軸のシステムが変形した結果か、テローム(より高くovertopping, 平らにplanation そしてひも状webbing)による。

(F,G)つづけておこる葉の起源。端末から側位への胞子転座。その結果いくつかの胞子が消滅する。tl;telome, to;telome outgrowth, sp;sporangium。点線は幹や葉の維管束になる前形成層か形成層組織。
 
 
図2。YABBYタンパクの構造。YABBY転写因子は2か所の高度に保存された
ドメインを持っている。N-terminal Cys2/Cys2 zinc-fingerドメインとC-terminal DNA-binding YABBY ドメインで後者は高い可動性ドメインに類似したhelix-loop-helix モチーフを意味している。
Αと標識した赤い矩形とβと標識した茶色の矢印はαヘリックスとβシートである。
核内局在シグナル(NLS)はYABBYドメインにあり、結合性を有しており、配列内に倍数のアミノ酸が domain内にあっておそらくホモダイマーを
形成している。(Gross, T.; Broholm, S.; Becker, A. CRABS CLAW acts as a bifunctional transcription factor in flower development. Front. Plant Sci. 2018, 9, 835. Bowman, J.L. The YABBY gene family and abaxial cell fate. Curr. Opin. Plant Biol. 2000, 3, 17;22. )
 
 
図3。
“vegetative(栄養成長期の) YABBY”グループの遺伝子発現パターン。
(A) A. thalianaの栄養成長頂芽の横断面の線描画
(B)A. thalianaの花の図形
(C)O. sativaの栄養成長器官の頂芽の横断面の線描画
(D)O. sativaの花の図形。“vegetative YABBY”遺伝子発現は青色にマークしている。ここと以下の図 4-6,ではsam;茎の成長点(shoot apical meristem)
, P0-P7—段階的な葉の原基と葉の発達, vb;維管束vascular bundle, ms—通導組織の筒, sc;厚膜組織sclerenchyma, sp;がく片sepal, pt;花弁, st;雄蕊stamen, cw; carpel wall雌蘂葉壁, o-子房, ovv;子房バルブ、 lm;lemma(外花頴), pl;palea(内頴), ld;lodicule(鱗被), sl;sterile lemma (empty glume:外花頴)。(C)の星印はSAMの印。
 
 
図4。小葉植物(lycophytes)のYABBYホモログの発現パターン。cz—SAMの中心領域, pz—SAMの周辺域, lp;葉の原基, sp;胞子嚢sporangium.
 
 
図5。生殖成長期の YABBYグループの遺伝子発現パターン。(A–C)CRCサブファミリーの発現、(D) INOサブファミリーの発現。(A) A. thalianaの花の図形。(B) O. sativaの栄養成長器官の頂芽の横断面の線描画。(C) O. sativaの花の図形。(D) A. thalianaの胚珠。cvb;中央維管束central vascular bundle, nc;密腺nectary, oi;外皮outer integument, ii;内皮inner integument, nu;胚心nucellus, fn;funiculus, (B) の星印は SAM。
 
 
図6。裸子植物でのYABBYホモログの発現パターン。(A) Gingko bilobaの栄養成長器官の頂芽の横断面の線描画。(B) E. distachyaの杯珠の縦断面。(C)Pseudotsuga menziesiiの栄養成長器官の頂芽の横断面の線描画。lp—葉の始原細胞leaf primordium, int;外皮integument, br;苞bract, ch;chlamys.
 
 

photo

photo

photo