WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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鉄ホメオスタシスの制御のために転写因子(OsFIT/OsbHLH156)はOsIRO2と相互作用する

Date: 2021-10-23 (Sat)

なお、この論文と同じ結論の論文が、中国人と日本人の研究者によって、同じ年に上梓されている。
 
(A transcription factor OsbHLH156 regulates Strategy II iron acquisition through localising IRO2 to the nucleus in rice
New Phytologist (2020) 225: 1247–1260 doi: 10.1111/nph.16232)
  
  



鉄ホメオスタシスの制御のために転写因子(OsFIT/OsbHLH156)はOsIRO2と相互作用する
Transcription factor (OsFIT/OsbHLH156) interacts with OsIRO2 to regulate iron homeostasis
Gang Liang, Huimin Zhang, Yang Li, Mengna Pu, Yujie Yang, Chenyang Li, Chengkai Lu, Peng Xu, Diqiu Yu
  
https://doi.org/10.1111/jipb.12933
J Integrative Plant Biology
  
(要旨)
  鉄(Fe)は植物の成長と発達に必須である。FER-LIKE FE DEFICIENCY-INDUCED TRANSCRIPTION FACTOR (FIT)がアラビドプシスではキーとなる制御因子であることはよく知られている。
  ここで我々はイネのFIT(OsbHLH156としても知られている)が鉄吸収制御の制御に重要であるIRON-RELATED BHLH TRANSCRIPTION FACTOR 2 (OsIRO2)のパートナーであることを同定した。
OsIRO2タンパクは細胞質と核に局在しているのだが、OsFITはOsIRO2の核への集積を促進するのである。
   OsFIT 遺伝子の機能獲得変異(Loss-of-function mutation)は鉄の集積を減少させ、激しい鉄欠乏症状を呈し、鉄吸収関連遺伝子の発現を途絶させる。
  一方、OsFIT遺伝子の過剰発現は鉄集積と鉄吸収関連遺伝子の発現を促進する。
  遺伝学的分析ではOsFIT遺伝子とOsIRO2遺伝子は同じgenetic nodeで作用する。
  さらに解析すると OsFIT と OsIRO2は鉄吸収遺伝子群の発現に着手する作用を持つ転写活性複合体を形成する。
  我々の発見は如何にしてイネが鉄ホメオスタシス維持しているかを理解するメカニズムを提供するものである。
    
    
(下図1。の説明)

提案されたOsFIT とOsIRO2の作業仮設。
A proposed working model of OsFIT and OsIRO2
イネの鉄(Fe)欠乏応答経路。OsHRZ1は OsIRO2, OsFIT, OsIRO3遺伝子の発現を活性化させるOsPRI1, OsPRI2, OsPRI3と相互作用してその発現を阻害する
OsPRI1, OsPRI2, and OsPRI3の類似遺伝子(paralog)は鉄ホメオスタシスの冗長な役割を演じているのだろう。
OsIRO2 と OsFITはヘテロダイマーを形成してそれらの下流の標的遺伝子発現を始動している。
OsIRO3は鉄欠乏応答性遺伝子の発現を負に制御している。OsIRO2は細胞質で優先的に発現している。
OsFITは核特異的に発現している。OsFITは核内でOsIRO2の核内集積を促進している。
OsFIT と OsIRO2は転写複合体として鉄吸収遺伝子群の発現をコントロールしている。



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図1