Rahnella aquatilis JZ-GX1の揮発性産物による植物の鉄吸収促進
以下の論文で同定されたとされている2-undecanone と 3-methyl-1-butanolは、いずれもヒトにとっては悪臭のする既知の揮発性物質である。根圏微生物が発生するガスが鉄吸収を促進するかもしれないという発想が面白いが、再現性は誰かの追試が必要であると思う。
Rahnella aquatilis JZ-GX1の揮発性産物による植物の鉄吸収促進
Enhanced Iron Uptake in Plants by Volatile Emissions of Rahnella aquatilis JZ-GX1
Frontiers in Plant Science | www.frontiersin.org 1 July 2021 | Volume 12 | Article 704000
doi: 10.3389/fpls.2021.704000
(要旨)
土壌の鉄欠乏は農林業生産の重大な制限要因である.
有用微生物が生産する揮発性有機化合物(VOCs)は植物の非生物的ストレスに対する耐性を誘導するのに重要な役割を果たすことが証明されている。
我々は根圏微生物であるRahnella aquatilis JZ-GX1の発生するVOCsの効果を鉄欠乏下でのアラビドプシスの成長と根のパラメーターについて調べてみた。
VOCsの鉄獲得遺伝子発現やホルモンシグナル経路についてRT-qPCRで検出した。
最後に鉄欠乏ストレス下での植物の成長を促進するJZ-GX1からのVOCsをスクリーニングした。
その結果JZ-GX1株はアラビドプシスの鉄欠乏ストレス耐性を、側根と根毛を発達させ、HC ATPase と Fe3C reductaseの活性を増加させることを示した。
さらに、JZ-GX1-発生 VOCsはアラビドプシスのAHA2, FRO2, IRT1 遺伝子発現をそれぞれ25-, 1. 81-, 1.35-倍に増加した。アブシジン酸(ABA)合成遺伝子NCED3も、3日目から5日目にかけてアップレギュレートされた。
ヘッドスペース法でこれらの有機化合物を分析すると、2-undecanone と 3-methyl-1-butanolが、鉄欠乏条件下でのMedicago sativa と A. thalianaの生育を促進した。
これらの結果はR. aquatilis JZ-GX1のVOCsが植物の鉄吸収を向上させるよい潜在的な可能性を立証したものである。
図1
図2
図3