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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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鉄欠乏オオムギの旧葉の初期老化が根からのムギネ酸類の分泌に貢献しているのかもしれない

Date: 2021-07-18 (Sun)

鉄欠乏オオムギの旧葉の初期老化が根からのムギネ酸類の分泌に貢献しているのかもしれない

Early senescence of the oldest leaves of Fe-deficient barley plants may contribute to phytosiderophore release from the roots

Kyoko Higuchi∗, Jun Iwase, Yoshifumi Tsukiori, Daiki Nakura, Nahoko Kobayashi, Hidenori Ohashi, Akihiro Saito and Eitaro Miwa

Physiologia Plantarum 151: 313–322. 2014 © 2014 Scandinavian Plant Physiology Society, ISSN 0031-9317
 
(要旨)
  
鉄欠乏耐性のオオムギ(Hordeum vulgare)は大量のムギネ酸類を根から分泌する。
 
しかし、鉄欠乏条件下で炭酸同化速度が減少している中で、どのようにしてオオムギがムギネ酸類合成のための資源を配分しているのかは未知であった。
 
以前に我々は鉄欠乏によって旧葉の老化を加速されると同化産物がムギネ酸類合成のためにリサイクルされる可能性を示唆しておいた。
 
本論文では旧葉のC/N比の増加と鉄欠乏耐性の関係について3つのオオムギ栽培品種で比較した。
 
C/N比の増大は旧葉から炭素か窒素がシンク器官に再転流する能力を加速していることを示唆していた。
  
鉄欠乏オオムギのsucroseが増加することは同化産物が積極的に再配分されることを示唆している。
  
このような代謝の変化は、鉄欠乏処理が老化関連遺伝子発現を増大させたということから、旧葉の老化が加速されることによるものあるということからも支持されるだろう。
   
鉄欠乏処理オオムギの旧い葉は鉄欠乏下でもCO2同化を維持している。
 
鉄欠乏処理3日目のオオムギは新規に同化された13Cを根と水耕液に優先的に分配した。
興味深いことに鉄欠乏オオムギの一番旧い葉は2番目に旧い葉よりもより多くの13Cを水耕液に分泌した。
  
したがって、高度に老化を制御された旧葉での合成と分解という代謝のバランスが鉄欠乏オオムギにおける代謝適応のキーとなる役割を果たすことになる。