師管伴細胞でのAtIRT1遺伝子の特異的発現は、地上部組織での鉄の移行に対する役割を示唆している
師管伴細胞でのAtIRT1遺伝子の特異的発現は、地上部組織での鉄の移行に対する役割を示唆している
Specific expression of AtIRT1 in phloem companion cells suggests its role in iron translocation in aboveground plant organs
Miroslav Krausko, Maria Labajova, Darina Peterkova, and Jan Jasik
PLANT SIGNALING & BEHAVIOR
https://doi.org/10.1080/15592324.2021.1925020
(要旨)
IRON-REGULATED TRANSPORTER 1 (IRT1)は鉄を根圏から根の表皮細胞に吸収することに役割がある中心的な膜輸送体である。
本研究では免疫染色化学、染色化学、蛍光法を用いてこのIRT1遺伝子のプロモーターが地上部の特に師管の伴細胞でも活性があるということを示したものである。
この組織部位でのプロモーター活性は根の場合と同じく鉄によって制御されている。類縁体であるIRT2のプロモーターは根特異的であり、茎の髄(pits)でのみわずかに活性がある。
RT-PCRによればもっぱら鉄欠乏根にのみ長いスプライシング様式がある。
短いスプライシング様式は鉄の有無にかかわらず、すべての組織に存在した。
免疫染色では成熟した根域の表皮細胞の周辺と、分裂細胞の細胞内斑点が染色された。
地上部ではこのタンパクは伴細胞内全体と隣接する師管成分で球状に見られた。
蛍光タンパク法では短鎖IRT1は主として核の周りにパッチ状に集積しており、長鎖IRT1は細胞周辺に沿って連続層として存在している。
これらのことからIRT1は地上部組織でもその役割があることを示している。
以下図の説明
図1。GUS染色とIRT1タンパクの局在
(a) pIRT1::GUS 系統の成長途上の葉の若い茎の断片。葉と茎の維管束組織にGUS染色で青色に見える染色反応
pITR1::GUS植物の葉の主脈(b)と支脈(c)の横断面にみられるIRT1 promoterが維管束組織の師管部分で活性を示している。
(d) pITR1::GUS植物の葉の通同組織と茎の維管束の師管の詳細な観察。すなわち、(e) 伴細胞中のGUS活性と師管構成成分での弱い活性。
(f)GUSの抗体を用いた免疫染色法によるpITR1::GUS植物の師管伴細胞へのGUSの局在
(g) IRT1プロモーターは雌蕊と雄蕊の花糸と花粉間の結合部位に活性がある。
鉄無投与(h)でのpIRT1::GUS実生の成熟分裂(h)と成長点(i)領域.
(j) pIRT1::GUS幼植物ではその成熟根域の始まり部分でのシグナルが、鉄投与培地で生育しているときには主にtrichoblastsで検出された。
pIRT1::GUSの根の成熟域(k)と伸長域(l)では、IRTプロモーター活性は表皮細胞、皮相細胞で発現しており、中心柱では発現していない。
(m)pITR2::GUS系統の手切りの切片ではGUS活性は髄で検出された。
(n)無鉄培地での野生型幼植物の根の分裂域の凍結切片におけるIRT1タンパクの免疫局在。標識は細胞内斑点にあり細胞外周辺にはない。他の根の根毛の周辺の標識は偶然に包埋中に近接して現れたものであることに留意されたい。
(o)IRT1抗体による凍結切片へのIRT標識。主に成熟根の表皮細胞周辺にシグナルが検出された。
(p)凍結切片における免疫染色法によるアッセイでは、IRT1抗体が維管束梢の師管に散在しているが、よく見ると(r)、師管の伴細胞にシグナルが見られる。
(s)雌蕊ではIRT1は、隔壁輸送管(?septum transmitting tract)いくつかの細胞の周辺に局在している。胚珠の部分は左右の位置にある。
(t)IRT1タンパクの長鎖のC末端にDendra2をくっつけたものは成熟根域の表皮細胞周辺に局在している。しかも細胞室内小胞に。
(u)短鎖IRT1のC末端にDendra2をくっつけたタンパクは核を取り巻く数多くの斑点に局在する(u, image prepared with Image J program represent Z projection of 3 slices)、しかも根毛の周辺の斑点にも(v, image represent Z projection of 5 slices)。
スケールバー: 500 µm (aと m); 100 µm (g); 50 µm (b,c,h,i,j, k,l と p); 25 µm (d,e,n,o,s,tとu); 10 µm (f と r)
図2.Western blottingによるIRT1の検出
(a) パーライトと水耕液(1/10 MurashigeSkoog)で鉄有り(13.5 mg/L)または鉄なしで育てた植物地上部のIRT1タンパク含量
(b) 1/2 MS または同濃度で、FeSO4 を除いてin vitroで育てたロゼット葉(l)と根(r)のIRT1タンパク含量。
(c) 1/2 MS または同濃度で、FeSO4 を除いてin vitroで育てた葉と根の異なる画分のIRT1
CYT = cytosol fraction, OM = organelle membrane fraction, PM = plasma membrane fraction.
図1
図2