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-植物鉄栄養研究会-


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植物のフェロトーシス:引き金、作用機作の提唱、細胞死の調節における鉄の役割

Date: 2021-05-07 (Fri)

植物のフェロトーシス:引き金、作用機作の提唱、細胞死の調節における鉄の役割

Ferroptosis in plants: triggers, proposed mechanisms, and the role of iron in modulating cell death

Ayelen Mariana Distefano, Gabriel Alejandro Lopez, Nicolas Setzes, Fernanda Marchetti, Maximiliano Cainzos, Milagros Cascallares, Eduardo Zabaleta and Gabriela Carolina Pagnussat

Journal of Experimental Botany, Vol. 72, No. 6 pp. 2125–2135, 2021
doi:10.1093/jxb/eraa425 Advance Access Publication 11 September 2020

(要旨)
植物のライフサイクルを通しての本質的なプロセスにおいて制御された細胞死は重要な役割を担っている。
それは特異的な発達段階の設計に関係しており、不適切な環境に応答した組織のホメオスタシスを維持している。
フェロトーシス(Ferroptosis)は最近発見された鉄依存性の細胞死過程のことで、脂質反応性酸素種の集積によって特徴づけられる。
植物では、フェロトーシスはほかの生物で記載されているすべての主要な特徴を共通して持っている。
この特異的な特色は種間で保存されている生化学的、形態学的特徴を含んでいる。
しかし植物の細胞は特異的な代謝経路と高度の代謝区画を有している。
そういう特別な形態のゆえに、これらの特色は植物のフェロトーシス経路に対してより複雑さを加味している。
この総説では植物におけるフェロトーシスの役割を、特徴的なトリガー(引き金)、主要なプレーヤ―、隠れた代謝経路に絞って、これまでに解明した最新の成果を整理して紹介した。


(下図の説明)
植物のフェロトーシスモデルの提唱。
フェロトーシスは熱と生体活動によるストレスによって誘導される。
その代謝経路はGSH欠乏、ROS集積、鉄依存性脂質過酸化が関係している。
細胞質の収縮、正常核、ミトコンドリアの収縮、分解性小胞体の形成、などが植物性フェロトーシスの顕著な特徴である。
鉄の集積は様々なメカニズムと細胞質区分が絡んでいるだろう。
鉄ホメオスタシスに関わるタンパク例えばフェリチンやPCBPsが植物フェロトーシスの期間に調節されているだろう。
電位差依存性アニオンチャンネル(VDACs)とNEETタンパク、ATM3トランスポーター、フラタキシン(frataxin)、鉄感受性タンパクPOPEYE (PYE)とBRUTUS (BTS)も重要な役割を有しているだろう。
酸化的爆発は、NADPH oxidase (NOX) 活性と毒性の脂質過酸化物の生成による細胞質へのROSの集積を通して起爆する。
これらの脂質過酸化物は細胞膜の不飽和脂肪酸(PUFAs)が、lipoxygenase (LOX)活性やフェントン化学反応などの酵素的または非酵素的過程の結果生成される。
しかし、どこで脂質過酸化が起こるのか、どの特異的な脂質が買酸化されるのかは不明である。
グルタチオンパーオキシダーゼ(GPX)は脂質過酸化物を解毒して、フェロトーシスのネガテイブレギュレーターとして作用する。GPXはチオレドキシン(TRX)を主要な還元剤として用いるが、GSHも利用するかもしれない。
GSHは酸化窒素(NO)の集積に必要である。なぜなら細胞の主要なNO保持体であるGSNOはGSHを必要とするからである。脂質過酸化物はそのターゲットが何かはまだ明らかではないがプロ・フェロトシス化合物として作用する。
しかし最近の研究では脂質過酸化物は細胞膜タンパクと相互作用して、穴をあけたり細胞膜に障害を与えることが示唆されている。CPX, Fer-1, Lip-1, DPIはフェロトーシスを阻止する。
エラスチン(Erastin)と RSL3はフェロトーシスの誘起剤である。図中の点線は間接的証拠である。

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図1