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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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作物改良における細胞内金属ホメオスタシスの役割

Date: 2021-04-25 (Sun)

作物改良における細胞内金属ホメオスタシスの役割

Roles of subcellular metal homeostasis in crop improvement

Khurram Bashir, Zarnab Ahmad, Takanori Kobayashi, Motoaki Seki, and Naoko K. Nishizawa

Journal of Experimental Botany, Vol. 72, No. 6 pp. 2083–2098, 2021 doi:10.1093/jxb/erab018 Advance Access Publication 27 January 2021

(要旨)
鉄 (Fe), 亜鉛(Zn), マンガン (Mn), 銅 (Cu)などは植物の生育と生殖成長にとっての微量必須元素である。
これらの金属は細胞の代謝、光合成、呼吸などのいくつかの細胞行程にとって決定的である。
これらの金属の吸収と分布を制御することは、究極的には、植物の成長を顕著に向上させ、作物生産を向上させることになる。
植物の成長は金属の欠乏によって制限される、一方ではFe, Mn, Cu, Znの過剰は植物にとっては毒でもある。であるからこれらの金属の吸収と分布は厳密に制御されていなければならない。
さらに、これらの金属の細胞内オルガネラ間での分布は最適な細胞代謝を維持するためにも極めて重要なことである。
細胞内金属分布や利用性を制御するメカニズムを理解することは急速に変化する環境条件によりよく適応する作物の開発を可能にするだろう。
本稿では細胞内金属ホメオスタシスに関する知見を記載した。特にアラビドプシスとイネについて細胞鉄ホメオスタシスに関して強調し、植物生産性向上のために細胞代謝を制御する戦略について議論した。



図1.液胞内での金属輸送:微量必須金属元素の液胞内外への輸送の総括。すべてのタンパクで、接頭文字Os (Oryza sativa L.; rice)以外はアラビドプシスからのものである。

 
図2。葉緑体での金属輸送の総括:クロロプラストの外膜とチラコイドにおける微量必須金属元素を制御するタンパク。それらが機能するのに金属が必要なタンパクの例を示している。CCS, Cu/Zn-SODのためのCuシャペロン; Cytb6f, cytochrome b6f; Fd, ferredoxin; FeRE, Fe-を要する酵素; Fe–S clusters, 鉄−硫黄クラスター, Fe molecules linked to sulfide that attach to proteins such as metalloproteins; FH, frataxin; MnRE, Mn-応答性酵素; PC, プラストシアニン; PetC, Rieske [2Fe–2S] タンパク; PSI, photosystem 1; PSII, photosystem II; SEC,分泌システム; Tat, twin arginine translocase; TP, 輸送タンパク.
 
  
図3. ミトコンドリアの金属輸送:微量必須金属元素の輸送を制御するタンパク。その機能に金属を要するタンパクの例。イネのMIT(Os) とOsATM3以外はすべてアラビドプシスからのタンパクである。Cyt c, cytochrome c; GSSG complexes, グルタチオン複合体; Heme,ヘム。

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