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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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鉄肥料としてのムギネ酸ファミリーフアイトシデロフォア・アナログの開発

Date: 2021-03-22 (Mon)

鉄肥料としてのムギネ酸ファミリーフアイトシデロフォア・アナログの開発

Motofumi Suzuki , Atsumi Urabe, Sayaka Sasaki, Ryo Tsugawa, Satoshi Nishio, Haruka Mukaiyama, Yoshiko Murata, Hiroshi Masuda, May Sann Aung, Akane Meral, Masaki Takeuchi, Keijo Fukushima, Michika Kanaki, Kaori Kobayashi, Yuichi Chiba, Binod Babu Shrestha, Hiromi Nakanishi, Takehiro Watanabe, Atsushi Nakayama, Hiromichi Fujino, Takanori Kobayashi, Keiji Tanino, Naoko K. Nishizawa & Kosuke Namba
Development of a mugineic acid family phytosiderophore analog as an iron fertilizer
NATURE COMMUNICATIONS | (2021) 12:1558 | https://doi.org/10.1038/s41467-021-21837-6 | www.nature.com/naturecommunications


(要旨)

鉄(Fe)は必須栄養素だが、アルカリ性土壌への溶解度が低いため、生体利用性が低い。これが農業生産性の低下につながっている。この問題を克服するために、我々はまず、Poaceae科の天然植物ジデロフォアである2'デオキシムギネ酸を合成し、それが、石灰質土壌で栽培されたイネのFe欠乏を回復できることを示した。しかし, 合成 2’デオキシムギネ酸の高コスト性と安定性の低さは、農業利用上の妨げになっている。そこで本研究では、より安定で安価なムギネ酸アナログである、プロリン-2'-デオキシムギネ酸を合成した。これが、Fe(III)・2'-デオキシムギネ酸輸送体(YSL)による原形膜を通過することを実証した。また、金属フリーのプロリン-2'-デオキシムギネ酸の土壌施用によって石灰質土壌中でイネの成長を促進されることが実証された。



図1の説明: 合成DMAアナログの輸送

(a)合成DMAアナログの構造。
(b)50 μMの55Fe(III)-DMAと55Fe(III)-プロリンデオキシムギネ酸(PDMA)投与で HvYS1発現Sf9昆虫細胞(1×10)7)は、これらのFe(III)輸送活動を示した。それに対して55Fe(III)-GDMAと55Fe(III)-MGDMAは、細胞のFe(III)輸送活動をわずかに示しただけであった。
(C)HvYS1、OsYSL15、またはZmYS1 cRNAまたは水(負制御)を注入したアフリカツメガエル卵母細胞を用いて、Fe(III)DMAおよび(Fe(III)PDMAの輸送活動を検出した。
(d) 9-フルオロメトキシカルボニルクロリド(FMOC)を用いたPDMA誘導体の検出を、LC-TOF-MS分析によりおこなった。水耕液中にFe-DMAおよびFe-PDMAを供給したイネの導管液を分析した。
略号は:DMA 2'デオキシムギン酸、PDMAプロリン-2'デオキシムギネ酸、 GDMAグリシン-2'-デオキシムギネ酸、MGDMA N-メチルグリシン-2'デオキシムギネ酸、HvYS1 Hordeum Vulgareイエローストライプ1、OsYSL15 Oryza sativa エローストライプ1様トランスポーター15、ZmYS1 Zea maysのイエローストライプ1

図2の説明: キレート剤を供給するイネの最新葉におけるSPAD値と金属濃度

(a) SPAD値を、移植後4日目に1回施用し、その7日後に測定した。
(b&#8211;e)最新葉の金属濃度。各処理に10個のポットを使用し、各ポットに3本のイネの苗を栽培した。各ポットの3つの最新葉を収集し、SPAD値とICP-MASによる金属濃度を測定した。各反復は各ポットの3つの植物の平均である。 異なる文字は、Tukeyの正直な有意差検定(両面)によってP<0.05で有意な違いを示している。
これらのデータは、SPAD値が他の微量元素ではなくFe濃度に関連しており、PDMAがZnと同様にFeを供給するのに有用である可能性があることを示している。

図3の説明: キレートが石灰質土壌における水稲の成長に及ぼす影響を示すパイロットフィールド実験

(a)キレート投与後1~4週間後の最新葉のSPAD値で、Fe欠乏を克服する上で30μM無キレートPDMAおよび30μM Fe-エチレンジアミンジ(o-ヒドロキシフェニル酢酸)(EDDHA)の優位性を示した。
(b)処理後2~4週間の稲の写真。PDMA:プロリン-2'デオキシムギネ酸、EDDHA:エチレンジアミン-N、N'-ビス(2-ヒドロキシフェニル酢酸)、DTPA:ジエチレントリアミンペンタ酢酸。

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図1

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図2

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図3