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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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トマトの鉄と硫黄の単独あるいはダブルの欠乏条件下での異なる根分泌物変化:鉄吸収の二重制御戦略か?: 3-hydroxymugineic acid を検出した。

Date: 2021-03-02 (Tue)

本論文は双子葉植物であるにもかかわらず、トマトの水耕栽培で、3−ハイドロキシムギネ酸が検出され、ムギネ酸類分泌のトランスポーター遺伝子発現も検出されたというものである。
 
 
トマトの鉄と硫黄の単独あるいはダブルの欠乏条件下での異なる根分泌物変化:鉄吸収の二重制御戦略か?
Single and Combined Fe and S Deficiency
Di_erentially Modulate Root Exudate Composition in
Tomato: A Double Strategy for Fe Acquisition?
Stefania Astolfi , Youry Pii , Tanja Mimmo, Luigi Lucini , Maria B. Miras-Moreno ,
Eleonora Coppa , Simona Violino , Silvia Celletti and Stefano Cesco

Int.J.Mol. Sci.2020,21,4038 doi:10.3390/ijm 21114038
 
(要旨)
鉄(Fe)クロロシスは植物の生育と収量にとって、世界的にも最も主要な制約である。特に硫黄(S)欠乏と関係している場合は、FeとSが緊密にリンクしているので最悪となる。
 
不適切な栄養利用条件に植物が適応するためには、しばしば根からの分泌物に依存している。それにより土壌コロイドからの栄養成分を稼働化して根からの吸収が促進されるからである。
 
本研究ではFeやSの単独や、FeとSの二重欠乏水耕栽培したり、遮光したりして、トマトの根からの分泌物のプロファイルを特徴づけて、植物によるFeや Sの獲得過程に潜む制御機構を解明するものである。
根の分泌物はliquid chromatography–mass spectrometry とgas chromatography–mass spectrometry following derivatizationによりuntargeted メタボロミックス分析を行った。
 
200種類以上の代謝産物が暫定的に同定された。Vennダイアグラムによれば23%, 10% and 21%の異なる代謝産物がFe欠、S欠、Fe-S欠それぞれに際立って変化していた。

興味深いことに今回初めてdicot植物の根分泌物からムギネ酸類縁体が検出された。

これらの結果はトマトの根において二種類の鉄獲得機構が共存するという仮説を支持するように思われる。
  
   
   
下図1の説明: 栄養の異なる栽培条件下で誘導されたアミノ酸分泌物の変化。
C = 対照区, F = Fe 欠乏区。 S = S 欠乏区, D = FeとSの二重欠乏区。対照区(C)に対する比率(p < 0.001)で表している。
  
  
下図2の説明: 対照区,( C) or Fe欠乏区 (F), 硫黄欠乏区 (S) ,( Fe と S )二重欠乏区 (D) のそれぞれの水耕液栽培条件下での根圏での鉄可溶化の機構を示したもの。

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図1

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図2