WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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二種類のブドウの台木の生理活性と根分泌物プロファイルの変化は、通常と、特殊な鉄獲得戦略を反映している. 3-hydroxymugineic acid を検出した。

Date: 2021-02-20 (Sat)

以下の論文には我々が双子葉植物であるオリーブの導管液からも発見したムギネ酸類(Suzuki Motofumi et al, SSPN)が、同じく双子葉植物であるブドウ樹の鉄欠乏根からも分泌されていることが示されていて非常に興味深い。ムギネ酸類はイネ科植物からしか分泌されないというのがこれまでの通説だからである。

二種類のブドウの台木の生理活性と根分泌物プロファイルの変化は、通常と、特殊な鉄獲得戦略を反映している
Changes in physiological activities and root exudation profile of two grapevine rootstocks reveal common and specific strategies for Fe acquisition
Laura Marastoni, Luigi Lucini, Begoña Miras‑Moreno, Marco Trevisan, Davide Sega, Anita Zamboni & Zeno Varanini

Scientific Reports | (2020) 10:18839 | https://doi.org/10.1038/s41598-020-75317-w

いくつかの栽培地域ではブドウ樹は石灰質かつアルカリ土壌ゆえに、鉄クロロシスの被害を浴びている。

この植物種は鉄欠乏に対して、根からの水素イオンの放出とに酸化鉄キレート還元力というStrategyIのメカニズムを活性化して対処している。

この台木によって示される耐性の程度はこの2つの応答に依存しているといわれてきたが、今日に至るまで、根の分泌物による役割については、あまり強調されてこなかった。

我々は二種類の耐性ブドウ台木(Ramsey と 140R)について水耕栽培で鉄欠乏応答の様子を検討した。
 
この実験条件下では2品種は、形態学的―生理学的パラメーターである根圏の酸化と三価鉄キレート還元活性制御能が異なっていた。
 
根分泌化合物の代謝プロファイルは通常の鉄獲得を示しており、鉄栄養を微生物と拮抗するためにアミノ酸や糖類の分泌を減少させて、その代わりに三価鉄還元化合物を増加させていた。
 
そのほかの分泌物の変化については、二つの台木が鉄欠乏に対処するために、分泌パターンを特異的に調整することであることが示唆された。
 
さらにこれらに化合物の中に3-hydroxymugenicが含まれていたことはブドウ樹の鉄利用性応答がさらに多様であり、通常言われてきたStrategy-1よりもはるかに複雑であることを示唆している。




図1。ブドウ樹根の鉄獲得に適した戦略。
Figure 6. Strategies adopted by grapevine roots to acquire Fe.
遺伝子型に依存しないRamsey-特異的、また 140R-特異的な戦略を概要図に示している。
  
緑色の箱:鉄欠乏に影響された戦略;黒色の箱は鉄欠乏に非依存性の戦略。Glu: glutamate; L-Tyr: l-tyrosine; MA: mugineic acid; L-His: l-histidine; L-Met: l-methionine.
  

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図1