WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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OsIMA1 とOsIMA2をコードする鉄欠乏誘導性ペプチドは、イネの主要な鉄吸収と移行を「正」に制御する

Date: 2021-02-05 (Fri)

以下は、イネの鉄栄養制御経路に関して、これまで欠けていたところを埋めた、画期的な論文である。著者である石川県立大小林高徳教授から添付て提供されたものである。


OsIMA1 とOsIMA2をコードする鉄欠乏誘導性ペプチドは、イネの主要な鉄吸収と移行を「正」に制御する

Iron deficiency-inducible peptide-coding genes OsIMA1 and
OsIMA2 positively regulate a major pathway of iron uptake
and translocation in rice
Takanori Kobayashi, Atsushi J. Nagano and Naoko K. Nishizawa
1 Research Institute for Bioresources and Biotechnology, Ishikawa Prefectural University, 1-308 Suematsu, Nonoichi, Ishikawa 921-8836, Japan
Faculty of Agriculture, Ryukoku University, Otsu, Shiga 520-2194, Japan
* Correspondence: abkoba@ishikawa-pu.ac.jp

Journal of Experimental Botany
doi:10.1093/jxb/eraa546 Advance Access Publication 18 November, 2020


(要旨)

利用性鉄濃度が低い条件下では、植物は鉄の吸収や移行に関する様々な遺伝子を転写レベルで誘導し、適切な量の鉄を獲得する。
  
イネにおいて、鉄欠乏応答性に関与する転写因子群やユビキチンライゲースは同定されているが、これらの代謝経路を協働させるメカニズムまだ解明されていなかった。
  
最近同定された鉄欠乏誘導性 IRON MAN (IMA)/FE UPTAKE-INDUCING PEPTIDE (FEP) はアラビドプシスおいて、鉄吸収に関する鉄欠乏誘導性遺伝子群を「正」に制御することが分かっている。
 
本論文で我々は、イネにおいて二つのIMA/FEP遺伝子であるOsIMA1 と OsIMA2が鉄欠乏条件下で強力に誘導され、IDEF1, OsbHLH058, OsbHLH059などの転写因子ばかりでなく、OsIMA1 と OsIMA2自身によって「正」に制御されていること、いっぽうで、HRZ ユビキチンライゲースによって「負」に制御されていることを報告する。
  
イネにおけるOsIMA1 またはOsIMA2の過剰発現体は鉄欠乏耐性や、鉄の葉や種子への集積能を付与されていた。
 
これらのOsIMA―過剰発現体イネは、鉄の吸収と移行に関係する
nicotianamine transporter 遺伝子であるOsYSL2以外の既知のすべての鉄欠乏誘導性遺伝子群の発現を根で促進したが、葉ではそうではなかった。
 
OsIMA1 または OsIMA2のノックダウン体は、OsIMA1ノックダウン根におけるいくつかの鉄吸収と移行に関する遺伝子の発現抑制を含めても、わずかな効果しかなかった。
 
これらの結果は、OsIMA1 と OsIMA2が、イネにおける鉄欠乏応答性の主要な代謝経路を促進するキーとなる役割を演じていることを意味している。
 
 
(図1の説明)
現在までの知見と、本論文で得られたOsIMA1 と OsIMA2の結果に基づく、イネの根における鉄欠乏誘導性遺伝子群の制御経路モデル。
卵型の囲みは転写因子群;矩形の囲みはその他の転写因子群。
色付きの転写因子群はアラビドプシスを含むすべての植物に保存されているものと思われる。
かっこ内はbHLH転写因子群のサブグループを意味している;赤線はOsIMAが媒介する誘導;黒線は転写制御;青線はタンパク質レベルか未知のタイプの制御;破線は推定上の経路。
図中、イネの遺伝子かタンパク質の接頭識別コードである‘Os’は 省いている。

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