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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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クマリンが媒介する(水)酸化鉄可溶化の酸化物の重要性

Date: 2021-01-26 (Tue)


クマリンが媒介する(水)酸化鉄可溶化の酸化物の重要性
Importance of oxidation products in coumarin-mediated
Fe(hydr)oxide mineral dissolution
Matthias Baune . Kyounglim Kang . Walter D. C. Schenkeveld .
Stephan M. Kraemer . Heiko Hayen . Gu¨nther Weber
Received: 17 April 2020 / Accepted: 12 September 2020
_ Springer Nature B.V. 2020

Biometals published on line
https://doi.org/10.1007/s10534-020-00248-y

アルカリ土壌では鉄の可溶性が低いので植物は、酸化鉄イオンの還元に元づくもの(Strategy-I)と、ファイトシデロフォアと鉄の結合によるもの(Strategy-II)との、二種類の鉄獲得機構を進化させてきた。

最近、鉄獲得に対するクマリン類の顕著な役割が発見されたが、それぞれの機構の詳細に関しては不明である。

クマリン類は鉄結合力があるリガンドではあるが、同時に還元剤でもあるので様々な反応の道筋があり、様々な鉄の種類と酸化型クマリンが生じうる。

この意味において、酸化型クマリンはただFe(III)の還元による副産物というばかりではなく、その次のステップとして鉄の稼働化に積極的に関与しているのかもしれないということがしばしば見過ごされている。

鉄水酸化物の可溶化における酸化型クマリンの積極的な役割を立証するために、鉄の熔解のデータを単体のクマリン(esculetin, scopoletin, fraxetin)とその酸化型産物を、 時間、pH、鉄系ミネラル(goethite, lepidocrocite)の関数で作表してみた。

我々の結果は、キノン形成、二量体化、水酸化クマリン、脱メチル化クマリン、そしてこれらの複合系という4つのクマリン酸化の反応ルートがあることを明らかにした。

時間依存性化合物ごとのパターンは鉄系金属、pH、クマリン分子により異なった。

酸化型クマリン類はしばしば元のクマリン類よりも反応性に富んだ。たとえば、scopoletinによる予期せぬ鉄の可溶化が起こるのだが、これは最終的に脱メチル化されてesculetinになる。

また酸化的水酸化と二量体形成はフェノール基の数を増やし、新しいキレート力を生み出している。

この3種類のクマリンに対して数種の「鉄−化合物」が同定された。
酸化反応は直接金属表面でまず始まるのであるからしばしばこれは効果的ではあるのだが、いつまでも鉄可溶化にさらに有効であるというわけではない。

 
 
表1 金属可溶化実験における、可溶化された鉄と消費されたリガンド

 
図1. esculetin (1), scopoletin (2), and fraxetin (3) の酸化還元反応。
1. esculetin 2.scopoletin 3.Fraxetin 4.Hydroxyfraxetin 5.hydroxyeculetin 6.Esculetin dimer 7.Hydroxy(esculetin dimer) 8.Esculetin trimer 9.Scopoletin dimer 10.Hydroxy(scopoletin dimer) 11.Hydroxyesculetin dimer 12.Scopoletin dimer demethylated 13.Fraxetin dimer 14.Fraxetin dimer demethylated 15.Scoparon

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表1

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図1