WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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根から分泌されるクマリン類と微生物叢との相互作用がアラビドプシスの鉄栄養を向上させる

Date: 2021-01-08 (Fri)

根から分泌されるクマリン類と微生物叢との相互作用がアラビドプシスの鉄栄養を向上させる
Root-Secreted Coumarins and the Microbiota
Interact to Improve Iron Nutrition in Arabidopsis
Christopher J. Harbort,1,8 Masayoshi Hashimoto,2,8 Haruhiko Inoue, Yulong Niu, Rui Guan, Adamo D. Rombola` ,
Stanislav Kopriva, Mathias J.E.E.E. Voges, Elizabeth S. Sattely, Ruben Garrido-Oter, and Paul Schulze-Lefert

Correspondence: garridoo@mpipz.mpg.de (R.G.-O.), schlef@mpipz.mpg.de (P.S.-L.)
https://doi.org/10.1016/j.chom.2020.09.006

Cell Host & Microbe 28, 1–13, December 9, 2020

(要約)


植物は根に生息する広域の微生物叢と会合することによってベネフィットを得ている。

これらの有益なサービスを裏づけるメカニズムを解読することは植物の生産性を高めるために興味あることである。

鉄欠乏下で植物が分泌するクマリン類に依存したアラビドプシスと根の微生物叢の間の、植物にとって便益的な相互作用について報告する。

クマリン合成酵素の代謝を欠損させると鉄欠乏下での微生物叢が変化し植物の生育が阻害される。

そのうえ、この微生物叢は植物の鉄吸収とクマリンfraxetin分泌に依存するメカニズムによって、鉄が律速である植物の生育のパフォーマンスを向上させる。

このような利便的な特徴は種特異的であるが作用性は生物叢での系統樹間で冗長(redundant)である。
  
転写解析と元素解析によって、このような共生生物叢とクマリン類との相互作用は鉄欠乏を軽減させることによって、植物の生育を促進させることが明らかになった。
   
これらの結果は、クマリン類が微生物が関係する鉄栄養を誘起することによって、植物のパフォーマンスを向上させることを示している。  
  
我々は、分泌されるクマリン類によって刺激されたバクテリア系の根の微生物叢が、集積的な仲介者となって、植物が鉄制限土壌に適応しているというモデルを提案する。
  
 
この論文では研究のハイライトである以下の4点を下図で示している。
  
・クマリン類は根の微生物叢を変化させて、鉄が制限因子になっている土壌での植物の生育を向上させる。
・この微生物相叢はクマリン依存的なメカニズムで鉄栄養を向上させる。
・この鉄利便的な片利性共生の菌株は分類学的に広域に及んでいるが菌の系統が特異的である。
・クマリンー微生物叢の相互作用は鉄欠乏を解決し、免疫応答を制御している。
 
 


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図1