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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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根における鉄欠乏とストレスシグナルのためのハブであるFITと、FIT依存的、非依存的遺伝子の特徴について

Date: 2020-10-19 (Mon)

(総説)
根における鉄欠乏とストレスシグナルのためのハブであるFITと、FIT依存的、非依存的遺伝子の特徴について
FIT, a regulatory hub for iron deficiency and stress signaling in roots, and FIT-dependent and -independent gene signatures
Birte Schwarz1 and Petra Bauer
 
Journal of Experimental Botany
doi:10.1093/jxb/eraa012 Advance Access Publication 10 January 2020


(要旨)

鉄(Fe)は植物の生育にとって不可欠である。植物は鉄の有用性と毒性のバランスをとっており、鉄吸収と分配を緊密にコントロールしている。

ここで、我々は、鉄獲得におけるbasic helix–loop–helix (bHLH)転写因子であるFIT(FER-LIKE FE DEFICIENCY-INDUCED TRANSCRIPTION FACTOR)の役割について総説する。
FITは根の細胞における単に必須のものというばかりでなく、それはまた、根の環境変動に対応して鉄の吸収を操作し調節する中心的な制御ハブでもある。

FITは根の鉄欠乏(−Fe)応答性遺伝子の部分集合体を制御する。
共発現ネットワークとFIT-依存的転写群解析を合わせた解析により、我々はFIT-依存的、FIT-非依存的遺伝子発現特性を持つセットと、鉄制御と鉄ホメオスタシスに特異的な共発現クラスターを明確にした。

これらの遺伝子特性は、鉄欠乏応答カスケードに向かう新規の制御因子やシグナルを統括するマーカーとして役立つている。
FITはbHLH サブグループの Ib転写因子と結合体を形成する.

さらに、FITは、成長や環境制約に対して必要な鉄獲得を調整するFITの働きを活性化したり抑制したりする、異なるシグナル伝達経路からの、キーとなる制御因子群と相互作用する。
共発現クラスター群やFITタンパク相互作用群は、鉄欠乏とABAとの応答と、根の細胞伸長過程との連携を示唆しており、これらは将来探求されるべき課題である。
  
 
 
 
(下図の説明)
  
1−4の共発現クラスター遺伝子の細胞機能
(A)クラスター1遺伝子群:FIT経路の活性化、鉄ホメオスタシスの制御、鉄やその他の金属イオンの地上部や根への分配、あるいは地上部や根でのその他の役割を演じる。
クラスター 1-遺伝子がコードするタンパクは、 bHLH038, bHLH039, bHLH100, bHLH101 of bHLH サブグループ Ib転写因子群; NRAMP4, Fe transporter; NAS4, ニコチアナミン合成酵素; FRO3, ferric chelate reductase; ZIF1, zinc-nicotianamine transporter; OPT3, Fe (signal) transporter; FEP1, FEP3, small proteins; PYE, bHLH subgroup IVb 転写因子; BTS, E3 ユビキチン・ライゲース.
そのほかに図に書き込んでいる転写因子群は、
bHLH034, bHLH104, bHLH105/ILR3, and bHLH115 of bHLH サブグループ IVc, bHLH121/URI of サブグループ IVb, FIT of bHLHサブグループ IIIa+c.
  
(B)クラスター2,3,4の遺伝子群は鉄獲得、細胞内金属ホメオスタシス、根の表皮細胞での細胞伸長に関わる成分をコードする。(表皮細胞は長方形で表示している)

クラスター2がコードする遺伝子群は、FIT, bHLH 転写因子, それと BTSL2, E3 ユビキチン・ライゲース.

クラスター3がコードする遺伝子群は、S8H, scopoletin hydroxylase; CYP82C4, fraxetin hydroxylase; FRO2, ferric reductase; IRT1, Fe2+ transporter; GRF11/RHS5, 14-3-3 protein; MTPA2, zinc transporter; IREG2, Fe/metal transporter;それとNAS2, ニコチアナミン合成酵素.

クラスター4がコードするタンパク群は、IRT2, Fe2+ transporter; LRX1, leucine-rich repeat and extensin protein; XTH12, XTH13, xyloglucan endotransglucosylases; それと RSH13, 根毛特異的RSH13.

他に書き込んでいる遺伝子はbHLH サブグループの Ib 転写因子群.

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