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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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根に誘起された土壌の変形がFe、S、Pに影響を与える:シンクロトロンXRFとXASを用いて研究した根圏化学

Date: 2020-08-30 (Sun)

Root induced soil deformation influences Fe, S and P: rhizosphere chemistry investigated using synchrotron XRF and XANES
 
 
根に誘起された土壌の変形がFe、S、Pに影響を与える:シンクロトロンXRFとXASを用いて研究した根圏化学
Arjen van Veelen, Nicolai Koebernick, Callum S. Scotson, Daniel McKay-Fletcher, Thomas Huthwelker, Camelia N. Borca, J. Fred W. Mosselmans3 and Tiina Roose
New Phytology第225巻、2020年2月ページ 1476-1490
 
概要
根圏土壌は、バルク土壌とは異なる物理的および化学的特性を有する。しかし、根によって誘導される物理的変化と比べれば、化学変化は細孔スケールそのものの状態で(in situ)広範囲に測定されていない。
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本研究では、これまでにシンクロトロンX線コンピュータ断層撮影(XCT)を用いて得た構造情報と、放射光X線蛍光顕微鏡(XRF)およびX線吸収近辺構造(XANES)を組み合わせることで、植物根によって引き起こされる化学変化を解明する。
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我々の結果は、鉄(Fe)および硫黄(S)が可溶化および微生物活性を介して根の直接近傍で顕著に増加することを示唆している。XANESはさらにFeがわずかに減少していることを示し、Sはますます硫酸根(SO42-)に変換され、リン(P)は、この濃縮ゾーンでhumic物質に吸着することがますます高まっている。さらに、フェリハイドライト画分は大幅に減少し、より安定なFe酸化物に優先的に形成されるこを示唆している。さらに、有機Sの硫酸への変換の増加は、このゾーンにおける微生物活性が増加することを示す。これらの土壌化学の変化は、XCTを介して以前に測定された土壌圧縮帯に対応している。
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これらの変化が根の近くに位置し、圧縮ゾーンが同じ位置にあるという事実は、土壌構造変化の結果としての透過性の低下が、表面介在プロセス、微生物活性および酸性化を介して根圏化学的相互作用が増加するゾーンを作り出す障壁として機能することを示唆している。
  
(下図の説明)
   
根圏における化学的相互作用の提唱。本研究で観察された空間的変化の主要な過程:還元、微生物活性、および有機物の複合化(シデロフォアや有機酸類)。XANESとは X-ray absorption near-edge structureのこと。

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