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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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「汽水の匂いに包まれて」 畠山重篤著

Date: 2020-07-25 (Sat)

「汽水の匂いに包まれて」 畠山重篤著 (マガジンランド発行)

この本は、いまさら言わずと知れた、漁民作家・畠山重篤さんの随筆集である。

2001年4月から2020年4月まで全国共済水産業協同組合連合会の漁業役員職員むけ機関紙「漁協の共済」に隔週連載されたものである。

まず20年間書き続けられた持続力に敬意を表したい。

畠山さんがこれまでに10冊以上におよぶ本を書いてこられた原点ともいうべき記録がこの本には凝縮されている。

牡蠣の養殖100年という畠山家の先祖から次世代までの、生産現場のさまざまな苦渋や喜びの体験に立脚した多様で豊かな発想には、読んでいて誰もが感銘を受けるだろう。

今ではだれもが熟知している、漁民が森に木を植えるというキャッチフレーズ『森は海の恋人』を発想し、その運動の立ち上げから、ずっと30年間にわたって運動を続けてこられた、その過程で、多くの講演会などを通じて多様なの人との出会いの豊かさが、畠山さん自身を今なお成長させていることが読み取れる。

各所で行政官や学者の自然環境に対する総合的な視点を欠いた行政や研究に対する、耳の痛い批判も展開されている。

何よりも、最後に行きついている発想、次世代に託す山の子供たちを海に招いての体験学習を実践していることが素晴らしい。

畢竟、視野狭窄でない自然を愛する情操豊かな次世代こそがこの国を支えるのだから。

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