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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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マメ科植物における光合成同化炭素の体内移行と根域への放出の空間・時間分布の可視化について

Date: 2020-06-27 (Sat)

以下の論文は、原研高崎量子科学研究所の成果です。根圏への、植物の光合成産物の排出の可視化・定量化に成功したものです。
20年前に、この研究所でPETISの手法を用いていろいろ苦労した小生には、手に取るように苦労がしのばれて、感慨にふけりました。様々な新しい創意工夫が想像できます。(森敏)

   

マメ科植物における光合成同化炭素の体内移行と根域への放出の空間・時間分布の可視化について

Visualising spatio-temporal distributions of assimilated carbon translocation and release in root systems of leguminous plants
Yong-Gen Yin , Nobuo Suzui , Keisuke Kurita, Yuta Miyoshi1, Yusuke Unno, Shu Fujimaki, Takuji Nakamura, Takuro Shinano & Naoki Kawachi

Scientific Reports | (2020) 10:8446 | https://doi.org/10.1038/s41598-020-65668-9

植物根域への排出は根の位置に依存し、光合成同化炭素(C)供給量に密接に関連している。

であるから、短期間のCの分配の定量化は「植物根―土壌」間の炭素代謝に関して決定的な情報を与えるだろう。

11CO2標識とPETIS(positron-emitting tracer imaging system)を用いて、直近に光合成同化したCが、根箱内での根域に移行することを可視化する、非浸潤的な方法を確立した。

直近の11C光合成同化産物の転流と根と根域への放出の空間的分布を、ホワイトルーピン(Lupinus albus)と、大豆(Glycine max)で可視化した。

直近の、全根に同化されたCが土壌に排出された割合は、ホワイトルーピンで90分間に約0.3%-2.9%であり、大豆では65分間の間に0.9%-2.3%であった。両植物種の間には有意な差はなかった。

しかし、ルーピンでは直近に同化されたCは、特殊な領域にホットスポットとして排出されていたが、大豆では根に均一に排出されていた。

我々が開発した手法は、Cの、根と土壌への空間的配分の定量化を可能にし、環境条件の短期間に応答する、根―土壌システムの特定の部位の、C代謝と養分循環の関係の解明に、資するものである。




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ホワイトルーピン(A)と大豆(B)の、光合成生産物の根箱の根への転流と根域土壌への排出