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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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二価鉄イオンは柑橘グリーニング病を緩和する

Date: 2020-06-16 (Tue)

二価鉄イオンは柑橘グリーニング病を緩和する

Fe2+ Ions Alleviate the Symptom of Citrus Greening Disease
Haruhiko Inoue , Sakiko Yamashita-Muraki , Kanako Fujiwara , Kayoko Honda ,
Hiroki Ono , Takamasa Nonaka , Yuichi Kato , Tomoya Matsuyama , Shoji Sugano ,
Motofumi Suzuki and Yoshikuni Masaoka
 
Int. J. Mol. Sci. 2020, 21, 4033; doi:10.3390/ijms21114033
www.mdpi.com/journal/ijms
  
要旨

柑橘グリーニング病(CG)は世界規模で蔓延する最大の壊滅的な柑橘病である。
CG感染木はCGによる鉄欠乏葉脈間クロロシスを示す。それゆえ健全葉に比べて、感染葉は鉄含量が低い。
本研究では、二価鉄イオンを葉面散布するとCG感染症状を軽減させることができることを実証した。
我々はFe2+とクエン酸を感染ラフレモン(柑橘類の接ぎ木台木:訳者注)の木に葉面散布した。この処理後黄化症状の葉の数が減少し、成長が回復した。
クロロフィル含量を指標に効果的な鉄化合物をスクリーニングし、Fe2+イオンに対するクエン酸の比が高い溶液がシーカーサー(Shikuwasa)のCG病に対して効果的であることを見出した。
全鉄含量のうちのFe2+含量が高いことがCG病感染に対する溶液のもう一つのキー・ファクターであり、このことは、Fe2+が植物細胞に吸収されることが重要であることを意味している。
我々は全鉄に対するFe2+の割合をトリアジン反応による屈折度とX-線吸収微細構造分析との高い相関を通して確認した。
これらの結果から、高いFe2+クエン酸溶液の葉面散布がCG病で罹患した柑橘樹の成長を回復することを実証した。
 
 
(下図の説明)
柑橘グリーニング病に感染した柑対で回復した症状。
(D) CG感染木の無処理区(H) CG感染木のFC3処理区。
矢印は処理期間の同じ葉を指示している。写真は葉面散布前(A,E)と投与後102日目(B,F)、151日目(C,G)、192日目(D,H)。
また、鉄剤葉面散布後192日目の (I) FC3-処理 CG-感染木、(J) 無処理 CG-感染木、(K) FC3 処理健全木、(L)無処理健全木である。

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