WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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進化的に保存された 鉄―硫黄クラスター はクロロプラスト・センサー・カイネース(CSK)の酸化還元センサー作用の基礎となるものである

Date: 2020-05-18 (Mon)

進化的に保存された 鉄―硫黄クラスター はクロロプラスト・センサー・カイネース(CSK)の酸化還元センサー作用の基礎となるものである

An evolutionarily conserved iron-sulfur cluster
underlies redox sensory function of the
Chloroplast Sensor Kinase
Iskander M. Ibrahim, Huan Wu, Roman Ezhov, Gilbert E. Kayanja, Stanislav D. Zakharov, Yanyan Du,
Weiguo Andy Tao, Yulia Pushkar, William A. Cramer & Sujith Puthiyaveetil

COMMUNICATIONS BIOLOGY | (2020) 3:13 | https://doi.org/10.1038/s42003-019-0728-4 | www.nature.com/commsbio
 
要旨

光合成効率は、2種類のスペクトルの明瞭に異なる、シリーズ的に結合した光合成システムによる等価な光エネルギー転換に依存している。
二つの光合成システムの間に局在しているプラストキノンプールの酸化還元状態は、光合成システムのrelative abundance における環境順応的変化を開始するキーとなるシグナルである。
クロロプラスト・センサー・カイネース(CSK)は光合成システムの遺伝子発現を伴うプラストキノンの酸化還元シグナルとリンクしているのだが、プラストキノンの酸化還元状態をモニターするメカニズムは不明である。
そこで本論文で我々はアラビドプシス と Phaeodactylum(褐藻?)のCSKと、シアノバクテリアのCSKホモログであるHistidine kinase 2 (Hik2)を精製して、これらが鉄−硫黄クラスタータンパクであることを示す。
さらにこの鉄−硫黄クラスターが高度の能力を持った[3Fe-4S]センターであることを明らかにした。
CSKは自動カイネース活性を抑制する還元型プラストキノンの酸化還元反応試薬に応答する。

CSK内での 鉄―硫黄クラスターの酸化還元変化はタンパクの折り重なりの立体配座変化をもたらす。
これらの結果は、CSKを基軸とするクロロプラストの2つの光合成システムによって酸化還元シグナルの感知と伝播が行われる、という根本的な洞察を与えるものである。


(下図の説明)
CSKがPQの酸化還元センサーである仮説モデル。

黄色の光はPSIIを優先的に活性化し、PQプールを還元する。
PQH2はCSK Fe-Sクラスターを還元し、CSK活性を不活化する。
遮蔽下での遠赤外光はPSIを優先的に活性化し、代わりにPQプールを酸化する。
この光条件下でCSKのFe-Sクラスターが酸素によって再酸化されてCSKは不活性な還元型構造から活性型カイネース
に変化する。
この活性型CSKが光合成システムの遺伝子発現を制御している。
CSKタンパクは8量体で示している。

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