WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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リン酸変異体活性アッセイ法による転写因子FIT の代替リン酸化による制御経路を見出した

Date: 2020-05-10 (Sun)

リン酸変異体活性アッセイ法によって、転写因子FIT (FER-LIKE IRON DEFICIENCY-INDUCED TRANSCRIPTION FACTOR)の、代替リン酸制御経路があることが分かった

Phospho-mutant activity assays provide evidence for alternative
phospho-regulation pathways of the transcription factor
FER-LIKE IRON DEFICIENCY-INDUCED TRANSCRIPTION FACTOR
Regina Gratz, Tzvetina Brumbarova , Rumen Ivanov, Ksenia Trofimov, Laura T€unnermann, Rocio Ochoa-Fernandez, Tim Blomeier, Johannes Meiser, StefanieWeidtkamp-Peters, Matias D. Zurbriggen
and Petra Bauer
New Phytologist (2019)
doi: 10.1111/nph.16168

(要約)
鉄吸収のキーであるbasic helix–loop–helix (bHLH) 型転写因子であるIRON DEFICIENCY-INDUCED TRANSCRIPTION FACTOR (FIT)は
複数のシグナル伝達経路によってコントロールされており、成長や環境制約下での鉄獲得の調節に重要である。
FITタンパクは活性・非活性タンパクプールに存在して、FITの制御ドメインであるC-末端のserine Ser272のリン酸化によってFITの活性化の引き金が引かれる。
本論文ではリン酸変異体活性アッセイ法(phospho-mutant activity assays)を用いて、Ser272以外にもさらに3つの予測されているリン酸酸化部位、いわゆる Ser221 とtyrosines Tyr238, Tyr278について、
疑似リン酸変異と否リン酸変異を調べた。
これらの部位のリン酸変異は酵母、植物、哺乳動物細胞ではFITの活性に影響を与えた。
細胞内局在、核への移動、ホモダイマーの形成、FIT-活性化の相手方であるパートナーであるbHLH039との2量体形成、プロモーターのtransactivation、タンパクの安定性などについて、 広範な一群の細胞表現型が観察された。
FITのTyrのリン酸疑似変異は植物のfit変異株の相補をかく乱した。
総括するとFITはSerのリン酸化で活性化されTyrのリン酸化で不活化されることが証明された。
そこで我々は「FIT活性は相反的な(代替する)リン酸化経路によって制御されている」ことを提案する。


(下図の説明)
タンパク質リン酸化によるFER-LIKE IRON DEFICIENCYINDUCED TRANSCRIPTION FACTOR (FIT)活性の2段階制御。
活性FIT(上):serine (Ser)リン酸化がFIT活性を促進する。
FIT-C末の Ser221と Ser272のリン酸化(P)がbasic helix–loop–helix 39 (bHLH039)との相互作用と、IRON-REGULATED TRANSPORTER1 promoter (IRT1pro)の発現を利する。
不活性FIT(下):活性FITタンパクが不要な場合とか少なくともそれが不利益な場合はtyrosine (Tyr)のリン酸化がFIT活性を低下させる。
FIT-C末 のTyr238とTyr278 はbHLH039のヘテロダイマー形成とIRT1proの発現を低下させ、一部のFITタンパクの分解を促進する。

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