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-植物鉄栄養研究会-


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19生都営法特第463号
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Medicago truncatulaの根粒の共生的窒素固定にニコチアナミン合成酵素2(Nicotianamine Synthase 2)が必要である

Date: 2020-04-02 (Thu)

Medicago truncatulaの根粒の共生的窒素固定にニコチアナミン合成酵素2(Nicotianamine Synthase 2)が必要である

Nicotianamine Synthase 2 Is Required for Symbiotic Nitrogen
Fixation in Medicago truncatula Nodules
Viviana Escudero, Isidro Abreu, Eric del Sastre, Manuel Tejada-Jiménez, Camille Larue, Lorena Novoa-Aponte, Jorge Castillo-González , Jiangqi Wen, Kirankumar S. Mysore, Javier Abadía, José M. Argüello, Hiram Castillo-Michel, Ana Álvarez-Fernández4, Juan Imperial and Manuel González-Guerrero

Frontiers in Plant Science | www.frontiersin.org January 2020 | Volume 10 | Article 1780

根粒とdiazotrophic bacteria である根粒菌による共生的窒素固定には相対的に高レベルの遷移金属を必要とする。
これらの元素は窒素固定過程にかかわる多くのキー酵素のコファクターである。
金属微量元素は土壌から根によって吸収され維管束を通じて、植物内液中の金属の分配を効率よく行う多くのトランスポーターや、有機低分子に媒介されてシンク組織に向かう。
後者の中ではニコチアナミンが最重要な化合物の一つである。
ニコチアナミン合成酵素(NAS)によって合成されるこの化合物は金属と結合をし、細胞内金属ホメオスタシスと長距離金属輸送に関与している。
我々はクローバー(Medicago truncatula)からNAS2遺伝子を同定した。
このMtNAS2タンパクは根の維管束とすべての根粒組織の感染部位と窒素固定部位に局在していた。
共生的窒素固定がMtNAS2 の働きを必要とすることは、窒素固定活性を欠失させたnas2-1変異株の表現型が、野生型のMtNAS2遺伝子を再導入すると回復した、ということによって裏づけられた。
この事はnas2-1変異株根粒で鉄の分布が変化していることが蛍光X線分析で示されたことにより裏づけられた。
さらに、これらの根粒内では鉄の空間分布も影響を受けていた。
これらの結果は、共生的窒素固定にとってニコチアナミン
が鉄の分配の役割を担っていることを示唆している。
 
  
以下、図の説明

図2.  MtNAS2は窒素固定に必要である。
(A) 野生株(WT)、変異株nas2-1、および変異株nas2-1にMtNAS2遺伝子をown promoterで制御したものを形質転換した(nas2-1 MtNAS2)植物。Bar = 1.5 cm。

(B) WT、nas2-1、 nas2-1 MtNAS2 植物の乾物重。少なくとも9株の平均値±標準偏差のデータで示す。


(C) WT、nas2-1、nas2-1 MtNAS2植物の代表的な根粒の詳細 Bars = 500 mm.

(D) nas2-1 MtNAS2植物の根粒数。異なる文字はP < 0.05 (Tukey t-test)での有意差検定で有意なもの。


(E) nas2-1, nas2-1 MtNAS2植物のニトロゲナーゼ(窒素固定)活性。異なる文字はP < 0.05 (Tukey t-test)で有意差あり。

  
 
図4.MtNAS2の遺伝子発現:根の維管束と根粒のlate zone II, interzone, zone III, vessels(脈管)
   
(A)Medicago truncatulaのMtNAS2プロモーター制御下での根と根粒でのGUS染色。Bar = 100 mm.
 
(B) M. truncatula根粒の縦断面のMtNAS2 プロモーター制御下でのGUS染色。ZIは zone I; ZIIは zone II; IZは interzone; ZIIIは zone IIIを意味している。Bar = 100 mm。
 
(C) M.truncatulaの根粒の横断面でのMtNAS2 promoter 制御下でのGUS染色。Bar = 100 mm.
 
(D)MtNAS2 promoter 制御下のM. truncatulaの根の横断面のGUS染色
  
   
第5図. MtNAS2タンパクは根粒のコアな細胞、根粒の維管束の内皮、根の維管束鞘の導管周辺細胞に局在している。

(A) M. truncatula根粒縦断面における MtNAS2自身のプロモーターによるMtNAS2-HAの発現。3つのC-末端HAエピトープに対するAlexa594-共役抗体(conjugated antibody)(赤、左パネル)の発現。
形質転換植物をGFP-expressing Sinorhizobium meliloti(緑、中央パネル)に浸漬させた。(右のパネル)は二つのイメージを重ね合わせたもの。ZI は zone I; ZIIは zone II; IZは interzone; ZIIIはzone III. Bars = 100 mm.
  
(B) zone IIIの詳細。説明は(A)に準じる。epi = nodule epidermis; cor=nodule cortex; end= nodule vascular endodermis; and
Xyl=nodule vascular xylem. Bars = 50 mm.

(C) M. truncatulaの根粒の横断面染色。方法は(B)に同じ。

(D) M. truncatulaの根の横断面の染色。方法は(B)に同じ。

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図2.

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図4.

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図5.