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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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アラビドプシスの鉄欠乏応答にはリン酸化された転写因子URIが必要である

Date: 2020-02-29 (Sat)

アラビドプシスの鉄欠乏応答にはリン酸化された転写因子URIが必要である
Sun A. Kim, Ian S. LaCroix, Scott A. Gerber, and Mary Lou Guerinot

www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1916892116 PNAS | December 10, 2019 | vol. 116 | no. 50 | 24933–24942

鉄は植物に必須の元素であるが過剰の場合は・OH(ラジカル)形成の触媒の役割をするので有害である。
であるから鉄吸収は高度に制御されていて、鉄欠乏下でしか誘導され得ない。
根における鉄吸収のメカニズムはよくわかっているが、いかにして植物が鉄欠乏を感知するのかはほとんどわかっていない。
我々はIRT1の上流の制御因子basic helix–loop–helix (bHLH)(URIと命名)がArabidopsis thalianaの鉄欠乏シグナル経路の必須の部分である事を示す。
このuri変異株は輸送体IRT1、3価鉄還元酵素FRO2、これらの転写制御因子であるFERlike iron deficiency-induced transcription factor (FIT)、bHLH38/ 39/100/101が鉄欠乏条件下でも誘導され得ない。
クロマチンを免疫沈降して(ChIP-seq)で塩基配列を読むと、urIはH38/39/100/101等の多くの鉄によって制御されている遺伝子と直接結合するが、FITとは結合しない。
11-URI転写物とタンパクは鉄の状態に関わらず発現しているが、URIのリン酸化物のみが鉄欠乏で集積される。
鉄の再添加でURIはプロテアゾーム依存的に分解され、リン酸化URIの代謝回転はE3 ligaseのBTSに依存している。
サブグループであるIVc bHLH転写因子群は、以前から
bHLH38/39/100/101を制御するといわれてきたが、主に鉄欠乏条件下でURIと免疫沈降することが分かった。このことは、in vivoでヘテロダイマーが形成できるのはURIのリン酸化型であることを示唆している。
我々はリン酸化型のURIが鉄欠乏条件下で集積し、サブグループのIVcタンパクと結合してヘテロダイマーを形成し、bHLH38/39/100/101の転写を誘導することを提唱する。
これらの転写因子らが巡り巡ってFITとヘテロダイマーを
形成し、IRT1 と FRO2の転写を駆動して鉄吸収が増加する。




下図の説明:

URIを経由する鉄欠乏シグナル伝達の仮想モデル

  
リン酸化URI(青色)は鉄欠乏条件下で集積し、サブグループである IVc bHLH転写因子 と相互作用する。

これらのヘテロダイマーは、サブグループIb bHLH 転写因子である、PYE、BTS、 BTSL1などの多くの鉄欠乏誘導性遺伝子のプロモーターと結合する。

サブグループIb 転写因子群は FIT の発現を増加し、FITとヘテロダイマーを形成し、IRT1 や FRO2 の転写を活性化する。

FIT依存性遺伝子は根の鉄吸収を高める。

PYEは細胞内鉄の移動に関する遺伝子を負に制御することによって、植物細胞内での鉄の利用性を高める。

E3 ubiquitin ligase BTS や BTSL1の転写は鉄欠乏によってアップレギュレートされるが、そのたんぱく質の活性は鉄が結合することによって促進される。

鉄が利用可能になるとE3 ubiquitin ligases (オレンジ色)が転写因子群と複合体を形成し、プロテアゾームによる分解に導かれる。

このようなBTSファミリーメンバーを経由する鉄依存性URI やFITの分解は、鉄欠乏シグナル伝達を解除し、鉄の過剰吸収を防ぐことになる。

その組織での分布の違いはどのE3ligaseが使われるかを決定している。(ここの文章不明)

BTSL やFITは根に特異的ではなく、植物全体どこでも発現している。


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