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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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植物におけるオートファジーと栄養統御

Date: 2020-02-17 (Mon)

植物におけるオートファジーと栄養統御

Autophagy and Nutrients Management in Plants
Qinwu Chen , Daiki Shinozaki , Jie Luo , Mathieu Pottier , Marien Havé ,
Anne Marmagne , Michèle Reisdorf-Cren , Fabien Chardon , Sébastien Thomine ,
Kohki Yoshimoto and Céline Masclaux-Daubresse
Received: 18 October 2019; Accepted: 9 November 2019; Published: 12 November 2019
Cells 2019, 8, 1426; doi:10.3390/cells8111426 www.mdpi.com/journal/cells

(要旨)
植物の全寿命を通じて、組織から組織への栄養の循環や移行は、環境変動下で植物が生き残るために必須である。
 
良好な種子の生産のためにも栄養の再転流は必須である。
 
このレビューで、我々は植物がいかにして成熟組織からシンク組織への栄養素の転流を行うのか、その過程におけるオートファジーの貢献度はいかなるものかについて総説する。
 
植物工学によるオートファジーの操作によってより良い収量やストレスに対するより強い植物の耐性の付与についても提案する。
 
 
 
図1.植物におけるマクロオートファジーとミクロオートファジーの模式図
 
栄養の利用性はTOR (rapamycinの標的)のリン酸化活性を制御し、それが逆にATG1と ATG13 (オートファジータンパク 1 と 13)のリン酸化を通してマクロオートファジーの転写後制御を行う。
pre-autophagosome構造の球(?)ののちに、ATG9, ATG18, ATG2などのオートファジータンパク(青色)はautophagosomeの膜の拡張に関係する。
いくつかのオートファジー(ATG)タンパク(オレンジ色)はATG8とphosphatidyl-ethanolamineが相互作用してATG8がpre-autophagosomeの膜に係留し、autophagosome形成と隔離閉鎖されることに関係している。
ATG8-interacting motifsは積み荷をつかんで、その分解のために中心液胞に連れていく。
マイクロオートファジーは液胞膜の陥入によって成立しており、アントシアニン液胞内包物(AVI)形成にも関与している。
  
  
図2.植物細胞での栄養素の再循環の様々な段階に関する模式図。
 
クロロプラストの物質や望ましくない細胞質の物質などは分解のためにマクロオートファジー経路で中心液胞に運び込まれる。
一旦液胞の内腔に運ばれるとオートファジー体(オートファゴゾームと積み荷)は内在するプロテアーゼや加水分解酵素によって分解される。
放出された栄養はトランスポーターやチャンネルを通して細胞質に運ばれる。
細胞質に運ばれた栄養は細胞の代謝やソース組織からシンク組織への移行のために細胞外に放出される。
細胞質の中で師管での長距離輸送に都合の良い化合物であるグルタミンやアスパラギンの形にアミノ酸のアミノ基転移が起こる。
多くの未解明部分がまだある。特にオートファゴゾームが液胞膜にドッキングするところや、液胞からの栄養の排出や細胞外への輸送等(クエスチョンマークで印す)。
 
 
図3.アラビドプシスでのオートファジィー変異株と過剰発現株での多量栄養素と微量栄養素の排出。
 
緑と青の矢印は%であらわした微量及び多量栄養素の種子への分配。野生株に対するノックアウト(atg5-KO)変異株の比で示している。
赤い矢印はアラビドプシスの硝酸体窒素過多条件下での対照株に対するATG8過剰発現株の過剰窒素の再転流量を測定したものである。
  
  


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