WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
転載希望時は連絡先まで

アラビドプシスでは最適な鉄の種子への転流にオートファジーが必須である

Date: 2019-12-26 (Thu)

アラビドプシスでは最適な鉄の種子への転流にオートファジーが必須である
Autophagy is essential for optimal Fe translocation to seeds in Arabidopsis
Mathieu Pottier, Jean Dumont, Céline Masclaux-Daubresse, Sébastien Thomine

bioRxiv preprint first posted online May. 3, 2018; doi: http://dx.doi.org/10.1101/313254.


<要旨>


微量要素欠乏は世界人口に多大な影響を与える。
なぜなら人々は不十分な亜鉛や鉄含量の種子を消費しているからである。
新しく根から吸収したり葉から転流したりして栄養素は種子に供給されている。
オートファジーは真核生物が維持する栄養素の転流のメカニズムであるが、これは窒素の再転流に関係していることが明らかになっている。
本論文では、このメカニズムが微量元素の種子への転流への役割を有しているかを検証した。
オートファジーを欠失した元素の種子への再転流能の欠損を示した。
atg5-1変異株は完全なオートファジー欠損株であるが、種子形成中に鉄を根から供与しても、栄養器官から種子への鉄の移行を劇的に減少させた。
オートファジー欠損と関連する時期尚早の老化を阻止するatg5-1と sid2 のダブル変異株で、57Feでパルス標識すると、種子形成途上では、新規の根からの吸収鉄の栄養器官への移行蓄積段階と、その後の鉄の再転流という2段階のメカニズムがあることが分かった。
最後に、亜鉛とマンガンの種子への移行もオートファジーに依存していることを示した。
だから、種子形成中のオートファジーによる微調整機構を用いれば種子への微量元素の再転流能を向上させることができるかもしれない。
    
     
<下図の説明>
鉄充分条件下で生育させた、野生種とオートファジー欠損種のアラビドプシスをもちいて得られた結果に基づいた、栄養成長期、生殖成長期、後期生殖成長期における鉄の流れ。
鉄吸収と再転流の矢印の濃さは流れに比例している。
鉄の分布(茶色の〇)はライフサイクルを完了して収穫した野生種の全鉄含量に対するパーセンテージである。
生殖成長初期というのはatg5-1変異株の未成熟期間と定義する。
後期生殖成長期とは野生株の成熟期で、atg5-1変異株はすでに枯れている。
得られたデータを総括すると
(1) 大部分の鉄吸収(71±4%1)は栄養成長期に行われ、
(2) 開花期以降の鉄吸収(29±5%2)は初期生殖成長期に行われ、
(3) 種子への鉄の集積(54±2%3)は直接根から吸収されるものではなく、再転流によるものであり、
(4) 野生種では全鉄含量の35±2%4がオートファジー依存性の再転流によって集積し35±2%5が非オートファジー依存で転流する。


photo
鉄の流れ