WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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DNAの脱メチル化は鉄栄養を向上させることによって植物のカドミウム毒性に対する耐性を促進する

Date: 2019-12-17 (Tue)

DNAの脱メチル化は鉄栄養を向上させることによって植物のカドミウム毒性に対する耐性を促進する

Inhibition of DNA demethylation enhances plant tolerance to
cadmium toxicity by improving iron nutrition
Shi Kai Fan Jia Yuan Ye Lin Lin Zhang Hong Shan Chen Hai Hua Zhang  Ya Xin Zhu Xing Xing Liu Chong Wei Jin
  
Plant Cell Environ. 2019;1–17.
  
(要旨)
植物において毒性金属カドミウムにさらされるというような非生物的ストレスによりDNAメチル化の変化がしばしば起ることが観察されているにもかかわらず、そのようなエピジェネテイックな変化が植物のストレスへの適応能力と関係しているかどうかは、ほとんどわかっていない。
ここではアラビドプシスにおいて、カドミウムストレス下でDNAメチル化と適応的応答の間に緊密な連関があることについて報告する。
 
Col‐0 の根では、カドミウムに曝すと3種類の脱メチル化酵素遺伝子ROS1/DML2/DML3 (RDD)の発現を阻害し、染色体広域レベルでDNAのメチル化が促進された。

さらに、カドミウム被曝Col‐0根でのDNAメチル化プロファイルはRDDを欠失したrdd三重変異に類似していた。このことはカドミウム誘導性DNAメチル化がRDDの阻害と関連していることを意味している。
  
面白いことにrdd変異株でのDNAメチル化の向上はカドミウムストレスに対してより高い耐性を示し、根における細胞内鉄栄養を向上させた。さらに、鉄供給量を低下させると、rdd変異株ではRDDが欠失したことによって向上したカドミウム耐性が完全消滅した。
  
以上の事から、カドミウムによる根のRDD経由のDNA脱メチル化は、鉄栄養を向上させることによって、フィードバックメカニズムでカドミウム耐性を向上させることを示唆している。
 
  
(下図の説明)
これらの種子を培地で4日間発芽させて、1または25‐μM
Feを含む培地に40‐μM Cdを移して7日間栽培した。異なるレベルの鉄濃度条件下でのCol‐0とrdd 植物の
(a) 根の伸長 と(b)新鮮重 を調べた。
M ± SD (n = 15)。異なる文字は有意差検定での有無を示す。星印は系統間での有意差検定を示す。nsは有意差なし。

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