WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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アラビドプシスのBRUTUS-LIKE E3 ligasesは転写因子FITをリサイクルさせるために鉄吸収を負に制御する

Date: 2019-10-17 (Thu)

Arabidopsis BRUTUS-LIKE E3 ligases negatively
regulate iron uptake by targeting transcription
factor FIT for recycling
Jorge Rodríguez-Celmaa,b, James M. Connortona,b, Inga Krusea,1, Robert T. Greena, Marina Franceschettia, Yi-Tze Chenc,
Yan Cuid, Hong-Qing Lingd, Kuo-Chen Yehc, and Janneke Balka,b,2
17584–17591 | PNAS | August 27, 2019 | vol. 116 | no. 35

(要約)


生物はたぶん毒性があるが鉄をバランスよく吸収する必要がある。
  
植物根では鉄吸収に関わる遺伝子は、鉄欠乏条件下では転写レベルで活性化されているが、鉄が利用可能になった時にどのようにしてこの応答が不活化されるかは知られていない。
   
ここで我々はアラビドプシスにおいて部分的に重複するE3 ubiquitin ligasesである BRUTUS-LIKE1 (BTSL1) とBTSL2について記載し、これらが鉄吸収におけるキーである制御因子である転写因子FITを標的として分解するという証拠を示す。
   
btsl 二重変異株はFITに支配されている遺伝子群の転写を効果的にダウンレギュレートできなくなり、根や葉に鉄を危険なレベルまでため込んだ。

BTSL1 と BTSL2のC-末端ドメインはE3 ligase活性を示して、FITと相互作用したが、その2量体形成の相手方であるbHLH39とは相互作用しなかった。
   
BTSLタンパクは試験管内ではFITをpoly-ubiquitin化しうるので、生体ではFITの分解を促進するだろう。
だから、FITの翻訳後制御は鉄の過剰摂取を阻止するために決定的に重要なのである。
      
       
(下図の説明)
 
鉄ホメオスタシスにおけるBTSL と BTSの作用モデルの提唱
(A)
FITの転写は鉄欠乏でアップレギュテートされる(上)。その結果FITタンパクレベルが上昇しbHLH39 (または bHLH38)タンパクとダイマーを形成する。
その(FIT + bHLH39)ダイマーはIRT1 やFRO2などの鉄吸収に関わる遺伝子群の転写をアップレギュレートする。
BTSL2の転写レベルはFITによってもコントロールされている。
BTSLタンパク群はE3 ubiquitin ligasesとして働き、FITの分解を促進する。BTSLの <N-末端 hemerythrin ドメイン> に結合する鉄はタンパクの安定性に寄与し、もう一つ別の制御の階層を形成する。
鉄が利用可能になった時に、鉄欠乏応答性を迅速にダウンレギュレートすることを容易にするための、FITの定常的な代謝回転モデル。

(B)
BTSL1 と BTSL2(オレンジ色)は表皮と皮相細胞にまず発現して、そこでFITタンパクのレベルを制御する。
BTS(グリーン色)は主に中心柱と地上部で発現しILR3のレベルを制御している。
であるから、BTSLタンパクはまず内鞘とカスパリー線の外側で鉄の過剰負荷に対して防御し、それに対して、BTSはこのバリアの内側で鉄過剰負荷に対して防御している。

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