WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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根圏バクテリアによって活性化されたアラビドプシスの根の鉄欠乏応答性:鉄の状態とシグナル伝達へのインパクト

Date: 2019-10-16 (Wed)

Rhizobacteria-Mediated Activation of the Fe Deficiency Response in Arabidopsis Roots: Impact on Fe
Status and Signaling
Eline H. Verbon, Pauline L. Trapet, Sophie Kruijs, Coline Temple-Boyer-Dury, T. Gerrit Rouwenhors and Corné M. J. Pieterse

frontiers in plant science
original article doi: 10.3389/fpls.2019.00909
  
(要旨)

根に生息する根圏細菌であるPseudomonas simiae WCS417は植物の成長を促進し、植物の広範囲にわたる病気に対する全身性抵抗力を誘導する。

アラビドプシスでは、WCS417に対する根の転写応答は、MYB72や IRT1など根の鉄欠乏応答性マーカー遺伝子の応答と、有意にオーバーラップしている。

本報文では、WCS417が棲息したアラビドプシスの根でどのようにしてWCS417が根と地上部の鉄ホメオスタシスに対してインパクトを与えているのかを調べた。

鉄十分条件下では、WCS417の根への棲息は根における一過性の鉄欠乏応答を引き起こし、地上部での全鉄含量を増加するとともに地上部の生体重を増加させた。

植物が鉄欠乏の条件下ではWCS417は植物の成長を促進したが、全鉄含量を増加させず、植物はクロロシスとなった。

それゆえ、より速く植物が生育するときに鉄ホメオスタシスを維持するためにWCS417に応答して鉄吸収が増加することが必須である。

WCS417誘導性鉄欠乏応答は、地上部由来のシグナルを必要とすることがわかっているので、より急速に成長する地上部における鉄要求性の増加に応答して鉄欠乏応答が活性化されるかどうかを調べた。

外から葉に与えて地上部に鉄が足りないという能力を低下させてみても、WCS417経由の根の鉄欠乏応答誘導を阻止することはできなかった。

さらに、葉の鉄の状態に依存した、地上部から根へのシグナル伝達(shoot-to-root signaling)の変異株opt3-2(これは師管特異的鉄トランスポーターOPT3の欠損したもの)でも、依然としてWCS417に応答して根のMYB72 や IRT1遺伝子がアップレギュレートされていた。

以上、まとめると、根におけるWCS417誘導性鉄欠乏応答は、葉における鉄の状態やOPT3とは独立に作用するshoot-to-root signalingシステムによって制御されているということが示唆された。