植物の栄養ホメオスタシスに必須の遠隔ペプチドシグナル
植物の栄養ホメオスタシスに必須の遠隔ペプチドシグナル
Long-distance peptide signaling essential for nutrient homeostasis in plants
Satoru Okamoto, Ryo Tabata and Yoshikatsu Matsubayashi
Current Opinion in Plant Biology 2016, 34:35–40
(要旨)
高等生物にとって組織間のコミュニケーションは全生涯にわたってホメオスタシスを維持するためになくてはならないものである。
これまでの研究で、植物も動物のように通導組織を通して長距離シグナルによる組織間のコミュニケーションを行っていることが解明されてきた。
特に、環境栄養状態の摂動に応答して根から地上部への導管移行分泌シグナル分子が多くの関心を引いてきた。
根粒バクテリアを接種させたときに誘導されるマメ科の数種のCLEペプチドは根粒形成に長距離的に負のフィードバックをかける“豊満シグナル(satiety)”として作用する。
これに対して、局所的な窒素(N)欠乏で誘導されたアラビドプシスのCEP ファミリー・ペプチドは、体全体の ‘飢餓’シグナルとして行動し、異なる根部位からこれを補償すべく窒素吸収を促進する。
導管液の包括的ペプチド分析(peptidomics)によればまだ未知の機能が特定できていない長距離輸送シグナルペプチドが存在している可能性がある。
この総説では、根から地上部への長距離ペプタイドシグナルについて、その機構と作用について、最新の解釈を紹介し、新しい省察を試みた。
図1の説明
分泌ペプチドによる長距離シグナルのモデル。
図1(a)CLE-RS1/2ペプチドは根粒菌接種で誘導される。またCLE-RS2ペプチドは硝酸に応答する。
CLE-RS1/2ペプチドは十分に利用できる窒素が根に存在するというシグナルを地上部に伝達する。HAR1受容体はCLE-RSペプタイドを認識しCKを根に送り以後の根粒形成を抑制する。
図1(b)CEPsは窒素欠乏で誘導され地上部に対して根が窒素飢餓であるということを伝達する。
CEPR1によるCEPsの認識は地上部から根部への仮定のシグナルを生成し局所的な窒素固定を補償すべくそこから離れた部位の根の窒素吸収を促進する。
図2の説明
長距離シグナルペプチド輸送モデルの仮説。
ペプチド類は皮層と中心柱の間を水が行き来するのをブロックしているカスパリー線で囲まれた内皮の内側で発現している。中心柱で発現したペプチドは導管におそらく受動的な拡散によって負荷され、過剰な水分の導管流とともに地上部に送られる。葉では、蒸散によってこのペプチドは濃縮されて特異的受容体と結合し、下流の遺伝子のシグナルを動かす。
図1(a)
図1(b)
図2