WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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Nramp1はポプラの鉄欠乏後期の鉄吸収を促進する

Date: 2019-06-23 (Sun)

以下の論文は、珍しくも、林学研究者による鉄(Fe2+)輸送の研究である。 樹木の生育は遅く、また、そろった幼植物材料を作成するのが煩雑なので、植物の鉄栄養研究者はなかなか樹木には手をくださない。安易にアラビドプシスばかり扱っている。その意味では、この論文は希少な成果である。   

   
Nramp1はポプラの鉄欠乏後期の鉄吸収を促進する

NRAMP1 promotes iron uptake at the late stage of iron deficiency in poplars
Hui-Min Chen, Yi-Ming Wang, Hai-Ling Yang, Qing-Yin Zeng and Yan-Jing Liu1
  
Tree Physiology, tpz055, https://doi.org/10.1093/treephys/tpz055
Published:
22 May 2019
  
(要旨)
鉄(Fe)は植物の生存と増殖に必須の微量栄養素である。鉄欠乏に対して植物は体内鉄ホメオスタシスの維持のために複雑な機構を進化させてきた。
本研究では鉄十分と鉄欠乏条件下でのポプラの間で生理学的、生化学的、トランスクリプトーム比較を行いポプラの鉄欠乏応答のメカニズムを解明した。
我々の結果は鉄欠乏条件下ではクロロフィル合成と光合成が阻害されていた。これらの経路の阻害がクロロシスを誘発し背丈の伸長を縮小していた。
光合成システム(PSIとPSII)は鉄欠乏で阻害されたが、PSIはPSIIよりもよりシビアにより早く阻害された。
鉄欠乏はまた根の成長を促進したが根の2価金属イオン含量の集積を増加した。
アラビドプシスの鉄吸収に関してはIRT1とNramp1がともにFe2+のトランスポーターである。しかし我々の研究では鉄欠乏応答の後期ではNramp1のみがFe2+吸収促進のために誘導された。
このことは、よく知られたIRT1よりもNramp 1の方がポプラの鉄欠乏後期では主要なFe2+トランスポーターであることを意味するものである。
 
 
図1の説明
鉄欠乏がポプラの形態に及ぼす影響 

図2の説明
ポプラ鉄欠乏ストレス下での鉄輸送モデル


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