WINEP

-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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イネのニコチアナミン排出型トランスポーターENA1の植物における機能の解析

Date: 2019-06-14 (Fri)

Characterization of the
Nicotianamine Exporter ENA1 in Rice

Tomoko Nozoye1,2*, Nicolaus von Wirén3, Yoshikatsu Sato4, Tetsuya Higashiyama4,
Hiromi Nakanishi2 and Naoko K. Nishizawa2,5

Frontiers in plant science
ORIGINAL RESEARCH
published: 30 April 2019
doi: 10.3389/fpls.2019.00502

ニコチアナミン(NA)はこれまで調べられた全ての植物で合成されることの示されている金属キレーターであり、鉄や亜鉛、銅、マンガンなどの二価イオンと錯体を形成する。植物体内では、NAは鉄や亜鉛の移行に関わることが示されている。報告者らは以前、イネのEfflux transporter of NA(ENA1)がアフリカツメガエルの卵母細胞においてニコチアナミンの排出活性を示すことを見出した。本研究では、ENA1の植物体内における機能の解析を行ったので報告する。
プロモーターGUS解析により、ENA1は鉄欠乏の根で主に発現されることが示された。また、根と地上部を連結する茎葉の基部においてENA1の発現が見られ、その発現は鉄欠乏により誘導された。ENA1とGFPの融合タンパク質は、タマネギの表皮細胞とイネの根細胞のいずれにおいても、主に細胞膜に局在した。一部の蛍光は細胞質の顆粒状構造に局在した。ENA1過剰発現イネ及びENA1発現抑制イネを作出して、これらのイネの表現型を観察した。発芽初期に、ENA1過剰発現イネの根は、非形質転換体とENA1発現抑制イネに比べて、顕著に短く、多数の根毛を形成した。この表現型は成長するとともに消失した。オリゴDNAマイクロアレイ解析により、ENA1発現抑制イネにおいて、非形質転換体に比べて発現の変動している遺伝子を抽出して解析を行った。ENA1発現抑制イネでは、細胞内小胞輸送と根のプラスチドに関わる遺伝子群の発現が変動していた。また、鉄十分条件で生育したENA1発現抑制イネは鉄欠乏誘導性遺伝子の発現が誘導されており、鉄欠乏条件では鉄欠乏誘導性遺伝子の発現が非形質転換体に比べて減少していた。以上の事から、ENA1は細胞膜と細胞内の画分の間を小胞輸送によりリサイクリングしていること、ENA1の機能が鉄恒常性維持に関与している可能性が示唆された。

下図の説明 
イネにおけるENA1の暫定的な役割の図解
NAとDMAは細胞内顆粒でMAs合成顆粒で生成されると予想されている。ムギネ酸合成顆粒は粗面小胞体なので合成されたNAやDMAは細胞質に移行し、つぎにENA1を通じて細胞外に輸送される。ENA1は主に細胞膜に局在しており、NAをアポプラストに輸送する。細胞内での機能に関してはENA1はNAを顆粒から排出しプラスチドに鉄を附加するのであろう。ENA1の輸送活性は鉄欠乏でアップレギュレイトされている。

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