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-植物鉄栄養研究会-


NPO法人
19生都営法特第463号
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鉄ホメオスタシスにおけるキー遺伝子bHLH115:アラビドプシス、トマト、イネ、トウモロコシにおける包括的バイオインフォーマテイックス

Date: 2019-06-05 (Wed)

以下は今流行の包括的バイオインフォーマテイックス手法を持ちいた研究の代表例である。
あの遺伝子(タンパク)とこの遺伝子(タンパク)が関係しているという相互作用の情報が子細に得られている。




鉄ホメオスタシスにおけるキー遺伝子bHLH115:アラビドプシス、トマト、イネ、トウモロコシにおける包括的バイオインフォーマテイックス

Article in BioMetals · May 2019
DOI: 10.1007/s10534-019-00199-z


(要旨)
bHLH115 型転写因子(TF)は鉄欠乏に対する正の制御因子であり、ストレス関連制御網で必須の役割を演じている。
 
本研究では、アラビドプシス、トマト、イネ、トウモロコシでbHLH115遺伝子群の類縁体を in silico法で調べた。
 
すべてのbHLH115タンパクはPF00010 (HLH: Helix-loop-helix DNA-binding domain)ドメイン構造を持っておりその細胞内局在部位は核と予測された。
 
単子葉と双子葉のbHLH115類縁体は明確互いに乖離拡散していた。
 
個々に調べた種において、bHLH115遺伝子発現解析の結果、この遺伝子は種子、葉、茎、花の部位で強く発現していた。
 
bHLH115遺伝子は植物の防御システムと共役して発現しており、生物的あるいは非生物的ストレス応答に関係する遺伝子と共役していた。
 
タンパクの構造に関してはOsbHLH115 と ZmbHLH115間、AtbHLH115 とSlbHLH115間で高い類似性を有していた。
また、bHLH115タンパク類がbZIP, bHLH およびMYB転の転写子との結合サイトを有しているということは、bHLH115タンパク類が多様な代謝経路にかかわっているということを強く示唆している。
 
Molecular docking 分析によると、植物の種によって異なる結合サイトを有したので、bHLH115遺伝子は機能的な柔軟性を有するということが示唆される。

   
(まえがき)の部分訳
鉄欠乏下でbHLH115転写因子は鉄欠乏応答性に対する正の制御因子である。bHLH115変異株は強い鉄欠乏症を呈する。また、この変異株では鉄欠乏応答性遺伝子発現はアップレギュレートされている。これに対してbHLH115の過剰発現体は逆の反応を示す。


  
(結論)の部分訳
bHLH115遺伝子の包括的バイオインフォーマテイックス解析の結果、この遺伝子は、植物の広域的な分子代謝に関係していることを示唆している。またタンパクレベルや遺伝子レベルでの構成的拡散はbHLH115遺伝子の機能的ダイナミックスを示している。
とくに、bHLH115遺伝子は明確に密接に鉄代謝と関係している。

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Intrachrome network analysis